I've seen you!
昨日と違って風もそう強く吹いているわけではなくて、そのせいかあたしが金属製の重い扉をガチャリと開けた音が、彼に聞こえてしまったようだった。



「あ。昨日の」



振り返った三浦悠真は、今日はどうやら泣いていないようだ。口元にうっすらと微笑を浮かべ、あたしを興味ありげに眺めていた。



「…どうも」



あたしは無愛想に挨拶をすると、ベストポジションを陣取っている三浦悠真の隣に歩みを進めた。



他意は無い。ただ、昨日に続いて今日までもあたしの特等席を彼に譲ったまま帰りたくないなと思っただけだ。



それを見ていた三浦悠真は手すりに寄りかかって景色を眺めるあたしに特に何か言うこともせず、自分もあたしと並んで景色の鑑賞を再開した。






ちっぽけなあたしたちの街。



この街で一体どれだけの人が生を受け、どれだけの人がその一生を終えたのだろう。



あたしにはそんなこと知る由もないし、知る術もない。

術ならあるが面倒だ。


町役場にでも行けば教えてくれそうなものだがそこまでこの街に愛着などない。



ただあたしがこの街で生を受け、あと最低でも1年と11ヶ月はこの街で過ごすというのは確定事項だ。転校でもしない限り。



別にこの街が嫌いというわけではないのだが、都心部での生活というのには正直憧れる。



まぁその辺はもう少し先の話で、あるいはあたしの成績がもう少し正視できるようになってからの話になるだろうけど。
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