I've seen you!
「ねぇ」



突然の呼び声に驚いて顔を横に向けると、三浦悠真もあたしの顔を見ていた。



「キミさ、2年生?」


「あ、うん、そうだけど」


「…ふぅん」


それだけ言って、三浦悠真は視線を戻した。



あたしも彼にならって、大して愛着もわかないちっぽけな街に視線を戻す。



「この学校って眺めいいんだね」



思い付いたように、また彼は話しかけてきた。



「その代わり通学が大変だけど」


「はは」



あたしがそれに答えると、三浦悠真が初めて声を出して笑った。



その短い笑い声が、あたしの耳に随分と強烈に残った。




「あんまり見ない制服だね」



数秒間の無言の後、初めてあたしから尋ねた。



「泉高。ブレザーって意外に寒くないか?」



三浦悠真の着ている紺のブレザー。隣町にある泉高校の制服は人気があると聞いたことがあったけど。



「─だね」



あたしも中学、高校とブレザー一筋だからよく分かる。学ランやセーラー服の学校からしばしば羨ましがられるブレザーは、意外にも防寒性に大きく欠ける。



今日は、昼くらいから暖かくなるらしいのだけど、朝のこの時間は冷たい風が時折吹いて、下に何か着込まないと風邪をひきそうだった。



一方の三浦悠真の方はというと、意外に寒くないか?なんて言いながら目立った防寒具は身に付けておらず、ブレザーの下も薄い水色のカッターシャツを着ているだけだった。
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