I've seen you!
エヌエイチケーが、地元のスタジオから朝のニュースを報道していた。



バイク事故があったらしい。おとといの夕方、あたしの家に程近い交差点で。



バイクを運転していたのは、あたしとそう年も変わらない15、6の少年だったらしくて。



自分も死んだ挙げ句、通行人も何人か巻き込んだとか、なんとか。



春の薫風清々しい、新学期早々に。



運の悪いヒトもいるものだ。



そんな風に考えて―いや、考えたとも言えないほど些末な感想をふっと頭のなかに巡らせて、



あの時、あたしはいつものように家を出たのだった。





「『ミサト』さん?その、それって」



あたしが尋ねると、三浦悠真は、あたしに向かって微笑んだ。



経験したことのない悲しみがその微笑みから伝わって来た気がして、あたしは咄嗟に目を伏せた。無言の微笑みは、おそらく肯定のしるしだ。



「もう会うことも出来ないのに」



わざと明るい口調でしゃべっている三浦悠真の姿が、どうにもつらかった。



「頭の中にはどうしようもないくらい鮮明に焼き付いてさ」



春の晴天を見上げる彼の笑顔。その目から、耐えきれなくなったのか涙がひとすじ頬を伝って、コンクリートの床にポタリと落ちた。



「…迷惑なヤツなんだよ、ホントに」
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