I've seen you!
「何かお礼した方がいいかな」

「いいよ、プレゼントもらった上にお礼とか気が引ける」



「そっか」



三浦悠真はにこりと笑って、またあたしたちの街を見下ろした。



プレゼントを手に持って、あたしも同じように屋上の手すりに腕を乗せ、景観を楽しむ作業に移る。





もう話すことが無くなったかのように、あたしたちは数十分もの間、ほとんど無言で景色を見続けた。



「ほとんど無言」というのは、たまに三浦悠真が、


「あ、また電車」だとか、

「休日なのに車多いね」


なんて、単発的に呟くから、あたしもそれに合わせて


「今度は赤色だね」だとか、

「不景気だからねぇ」


なんて、あってないような返答を単発的に言ってよこすのだった。



あたしにとって、そんな「ほとんど無言」の時間は決して苦痛ではなかったばかりか、



この時間がもっと続けばいいと思っていた。



初め見た三浦悠真の姿は、妙に綺麗で、それはどこか絶望的な寂しさと哀しみを孕んだ“綺麗さ”だった。



その“綺麗さ”があたしを釘付けにしたのは確かなのだけど。



他愛のない会話をしているときの、どこか安堵した雰囲気の三浦悠真を、あたしは見ていたいと思い始めたのだった。



笑いたいなら笑えば良いのだけど。



つまり、こういうことだった。


あたしはつい昨日会ったばかりの、三浦悠真を─



彼のことを、好きらしい。
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