未来への旅路。
序章
8月23日。
それはいつもより暑い日だった。
珍しくママが真面目な声色でわたし達を呼んだ。
わたしは特に気にせず、いつもの場所へ座る。
これから起こることなんて、これっぽっちも予想してなかった。
「ママ達ね、引っ越すことにしたの」
五月蠅く感じていたセミの鳴き声が止まった気がした。
言葉よりも先に涙が出た。
妹達は下を向いていた。
「嫌っ!!転校なんてしたくないっ!!」
「じゃぁ、パパについて行くの」
「それもいやぁ・・・・っ」
反抗したのはわたしだけ。
そして結局、ママについて行くことに。
妹達は泣かず、ただ「ママについて行く」としか言わなかった。
あの選択が正しかったのか、なんて今でもわからない。
でもどっちを選んでも幸せになれる気がしなかった。
だから後悔なんてしていない。
でも時々思うんだ。
もしパパを選んでいたら・・・・って。
ねぇ、神様。
引っ越してなかったら、
わたしは普通の幸せが手に入りましたか??