うさぎの小箱~【鍵つき】短編集~
1.☆子猫が初恋提供します。~子猫ちゃんと甘い夢~
麗らかな春の昼下がり
あたしはいつもの中庭で一人ベンチに座って日向ぼっこ。
4月も下旬に差し掛かって………他の桜はみんな散ってしまったっていうのに、
ここの桜だけはまだ花が残っていて………変わらない美しさを誇っていた。
「…………不思議だなぁー…。何か特別な桜なのかなぁ?
あなたは本当に綺麗な桜だねぇー…?」
綺麗な桜を見上げて、通じるはずもないのにそんなことを話しかけた。
見る限り、なんだか年代物の桜のような気もするけど………桜に詳しくないあたしにその区別はわからない。
まぁ………いいや。
しかし、気持ちよすぎて眠くなる…………。
ふわ…とあくびが出てしまう。
重くなる目をごしごしこすって、またあくびをかみ殺した。
さっきまで一緒だった夜は用事があるって嵐さんが引っ張って行っちゃったけど…忙しいなら放課後まで逢えないよねぇ…………。
だいたい、学年だって違うもんね。(夜はいつも暇さえあれば一年生の教室にいるけど…)
あたしといない時の夜ってどんなだろう?
夜だもんね。変わらないのかなぁ……?
ちょっと見てみたい………そんなことを眠くてぼんやりする頭で考えた。
サァー………気持ちいい風がふんわり桜の香りと花びらを運んで来て…………
まるで…眠りなさい…なんて言われているよう…………。
あたしはそれに誘われるように、ゆっくりと瞳を閉じた…………。