うさぎの小箱~【鍵つき】短編集~







「…………嵐ちゃん、いらっしゃい。久しぶりだねぇ?」



「うさちゃん、ご無沙汰。夜いる?」



藤間家の玄関先で、俺は迎えてくれた美貌の人にそつない笑顔を向けた。



夜の母親、藤間雪兎(トウマユキト)さん。通称うさちゃん。



マジであなたは高校生の息子の母親ですか?…なんて聞きたくなるくらい若くて綺麗すぎる人。



この人が夜の母親なんだと思うと未だに不思議なんだよなぁ………。



「部屋にいるからどうぞあがって」と促され二階にある夜の部屋を目指す。



階段をトントン上がり……夜の部屋の隣の部屋の前で、自然と足が止まる…………。



白いドアをつい、見つめてしまった…………。



馬鹿だな……俺は。



もうとっくの昔に諦めた想いなのに……



未だにここに来ると足が止まるなんて。



未練がましいのか…………そんな自分に苦笑が漏れた。



…………その時



――――ガチャ…



「………!?」











ゆっくり開かれたドアの前で固まった。



「………?………嵐ちゃん……?」













嘘だろ…………神様。








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