うさぎの小箱~【鍵つき】短編集~
「…………そういうおまえはどうなんだよ?
いつまでもドーテーなわけ?」
冗談めかして夜を見て話題をうまく摩り替える。
夜はめんどくさそうな視線を俺に向けた。
本当に心底この話題がキライらしい。
「いーよ。べつにー…セックスしなくても生きてける………。」
「…………まー…、そりゃそうだけどな。
もうすぐ入学式だし…案外、運命の出逢い…なんてのがあるかもよ?」
「運命の出逢い…ねぇ~…。」
夜はアホくさいと言わんばかりにクダラナイとつぶやいた。
「…………いーじゃん。もっと気楽に恋愛を楽しめばさ?
人肌ってなんか落ち着くんだよな……。」
「…………おまえはいつまでダレかの変わりを探すんだ?」
「…………っ!」
強い瞳は俺の心の中まで見抜いているようで…………
俺は何も言えずに固まった。
「…………おまえさぁ5年前くらいから誰よりも大人にこだわって…………
………誰よりも、その時のまま止まってんだよ。」
「…………夜……」
奥底を思いっきりえぐられた。
中身は俺より余程ガキだと思っていた男は…………俺より余程…何もかもをわかっていた…………。
「…………難しく考えるんじゃねぇよ。
事実はもっとシンプルだ。」
「…………それ…聞き覚えあるな………。」
俺のつぶやきに………「そうだっけ?」…夜はきょとんと首を傾げた。