うさぎの小箱~【鍵つき】短編集~
★それは偶然に…~彼女のパパと彼氏のパパ~side時春(夜パパ)
【side時春(夜パパ)】
関西であった学会の帰り…………
思いがけず早くこっちに着いたせいか、いつもは真っ直ぐに家に帰るところなんだけどな………
珍しく雑居ビルの一角にある小さなバーが目についた。
何となく足を進めてみると…………
バーの扉の前で立っているスーツ姿の長身の男………。
そのよく整った横顔に見覚えがあった。
「…………橘(タチバナ)先生?」
「………!………藤間先生……ですか?」
振り返って俺に視線を向けるとあまり変わらない表情ながら…微かに目を見開いて驚いているように見えた。
橘 由貴(タチバナユキ)。
無口であまり愛想はないながら目を惹く容姿も腕も評判の外科医だ。
どうやら同じく学会の帰りらしい。
「…………俺もどうしようか悩んでるとこでした。
………よろしければ、一緒にいかがですか?」
外科でも評判の腕をもつ男に珍しく多少の興味もあって、声をかけていた。
「…………じゃあ、ご迷惑でなければ………。」
「それは、もちろん。」
二人で少し笑って…バーの中に入っていった。