うさぎの小箱~【鍵つき】短編集~
曖昧に返事をして、そう言えば……うちも先日、夜兎が彼女を連れてきたな………。
やっぱり娘と息子じゃ気持ちが大違いだった。
そんなことがふいに頭の中に浮かぶ。
ずいぶんと可愛い子で………確か、名前が…………………
…………《橘》にあ……………ん?
ちらっと横でグラスを口にした橘医師を見る。
……………おい。
世間は狭いったって……………まさかだよな……………?
「…………もう確かに16ですからね……。」
「…………相手は同級生………ですか?」
憂い顔の父親に思い当たる動揺を隠しつつ聞いてみる。
「いや………、ひとつ上の先輩だったと………曖昧ですが。」
「…………そう、ですか………。」
…………うちの意味不明も…確か、ひとつ上……………。
いや………だからって…まさか……………っ。
「…………あぁ、もうこんな時間か………。
そろそろ出ましょうか?」
「あ…あぁ、……ですね。」
時計を見ながら微かに苦笑する橘医師に…混乱する頭で返事をして、席を立った。