死のスケッチブック
ガタンッ…!

―そして少女は絵の通り、首を吊って死んだ。
 
スケッチブックが風も無いのに捲れる。

中に描かれているのは、多くの死体の絵だった。

鉛筆で描かれた絵もあれば、マジックで描かれた絵もある。

絵はそれぞれ、違う人間が描いたのだろう。

しかし共通点が二つ。

一つは描かれているのは、全て死体であること。

二つはその死体には必ず赤い色があること。

少女の描いた自身の絵にも、口元に血の色がある。

実際、少女の死体にも同じところに血があった。

少女が唇を噛み切ったからだ。

スケッチブックは何枚か捲り上がった後、元の少女の死体の絵のページに戻った。

少女の死体から流れる血が、ポタポタとスケッチブックに落ち、絵の中の赤が血の色に染まっていく。

鮮やかな血の色のおかげで、絵はその美しさを増す。

―そのスケッチブックには不思議な力が宿っていた。

強い憎しみを持っている人間のみが、所有できるスケッチブック。

描くのは殺したいほどの憎しみを抱く、人間の死体だけ。

正確に描けば描くほど、描かれた人間は想像通りに死ぬ。

故にそのスケッチブックは、こう言われている。

『死のスケッチブック』と―。
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