シアワセ色の空
何かの本に書いてあった。
“あまりに
日常的になっている物事は
変化や事件が起きて
初めて意識するものだ”と
。
はじめは
何とも思っていなかったんだ。
ただその道ですれちがうだけ。
毎日のことなのに
一年ちかく
顔も覚えていなかった。
だけど。
ある春の日の帰り道。
キミは泣いていた。
いつもは
たくさんの友だちが
一緒だったのに
その日はひとりで。
下を向いて泣いていた。
思わず声をかけようとした。
話したこともないのに。
名前も
顔さえよく知らないのに。
キミは
涙を隠そうともせず
静かに
僕の横をすれちがった。