道摩の娘
りいは無心に陰陽寮を目指した。
刀を掴み目をぎらつかせたりいの様子を、すれ違う官人たちがぎょっとしたように見ているが、幸い咎め立てはなかった。
以前の記憶のおかげで、建物までは迷わずたどりつく。
そして、その辺を歩いていた陰陽師を捕まえる。
「安倍晴明はどこですッ」
哀れな陰陽師は、ひっ、とひきつった声を上げつつも、陰陽寮の一室を示した。
りいは何の躊躇いもなく陰陽寮に踏み込んだ。
ずかずかと廊を突き進む。
普段ならばそんなとんでもないことはできないが、今は気にならなかった。
「――晴明!」
振り向いた晴明は絶句して、突然現れたりいを見つめるしかできない。
よく見てみれば、その部屋には保憲もいて…なぜか、小さく笑っていた。
だがとりあえずは晴明である。
りいはきっ、と晴明を見据えた。
「りい、なんで…」
晴明がかすれた声で呟いて、目を逸らした。
その態度に、彼の受けた傷を思い…同時に、何故か腹が立ってきた。
りいは、晴明に詰め寄った。肩に手をかけて、無理矢理こちらを向かせる。
「晴明!あのなっ…」
…と、そこまで言ったとき、りいはとんでもないことに気付いた。
―――何を言えばいいのか、わからない。
真鯉の話を聞いて、いてもたってもおれずに飛び出してきたが…
自分が何を伝えたいのかすら、考えていなかった。
(ば、莫迦か、私は…っ)
内心焦るが、晴明の肩を押さえつけた手はもはやどうにもならない。
「…あの…だから…つまり」
勢いこんでみたものの、 次の言葉がどうしても出てこない。
口ごもるりいを、晴明はどこか冷めた目で見ていた。
あの時のように。
「りい…別に、気にしなくていいから。受け入れて貰えるなんて、思ってないし」
晴明がどこか投げ遣りに言った。
刀を掴み目をぎらつかせたりいの様子を、すれ違う官人たちがぎょっとしたように見ているが、幸い咎め立てはなかった。
以前の記憶のおかげで、建物までは迷わずたどりつく。
そして、その辺を歩いていた陰陽師を捕まえる。
「安倍晴明はどこですッ」
哀れな陰陽師は、ひっ、とひきつった声を上げつつも、陰陽寮の一室を示した。
りいは何の躊躇いもなく陰陽寮に踏み込んだ。
ずかずかと廊を突き進む。
普段ならばそんなとんでもないことはできないが、今は気にならなかった。
「――晴明!」
振り向いた晴明は絶句して、突然現れたりいを見つめるしかできない。
よく見てみれば、その部屋には保憲もいて…なぜか、小さく笑っていた。
だがとりあえずは晴明である。
りいはきっ、と晴明を見据えた。
「りい、なんで…」
晴明がかすれた声で呟いて、目を逸らした。
その態度に、彼の受けた傷を思い…同時に、何故か腹が立ってきた。
りいは、晴明に詰め寄った。肩に手をかけて、無理矢理こちらを向かせる。
「晴明!あのなっ…」
…と、そこまで言ったとき、りいはとんでもないことに気付いた。
―――何を言えばいいのか、わからない。
真鯉の話を聞いて、いてもたってもおれずに飛び出してきたが…
自分が何を伝えたいのかすら、考えていなかった。
(ば、莫迦か、私は…っ)
内心焦るが、晴明の肩を押さえつけた手はもはやどうにもならない。
「…あの…だから…つまり」
勢いこんでみたものの、 次の言葉がどうしても出てこない。
口ごもるりいを、晴明はどこか冷めた目で見ていた。
あの時のように。
「りい…別に、気にしなくていいから。受け入れて貰えるなんて、思ってないし」
晴明がどこか投げ遣りに言った。