道摩の娘
弐
―幼い自分が泣いている。
播磨の隠れ里。故郷である。
もうずいぶんひとりで泣いていた。
泣き疲れて、それでもまた涙があふれてくる。
そろそろ戻りたいが、仲間にこのような情けない姿を見せるわけにはいかない。
幼くとも自分は一人前の法師なのだから。
ひとりで生きて行けるのだから。
…ぐすぐすと鼻をすすっていると、ふいに影が射した。
びくりと顔を上げる。
「ああ、こんな所にいたか」
半ば呆れたような笑み。
「お前はなあ…あんまり強がんじゃねえよ。親が死んだんだ、悲しんで当然だろ。…ひとりで泣くな」
そう言って頭に乗せられた無骨な手の温もりを、自分は決して忘れない。
◆
「…道満、さま…」
自分の声で目を覚ました。
目に飛び込んでくる、朝の光。
(夢、か…)
懐かしい夢を見たものだ。
だが浸っている暇はない。今は居候の身、寝坊など言語道断である。
起き上がり、てきぱきと狩衣を身につける。
帯を巻こうとしたところで、ふと手が止まった。
そういえば、<あのこと>を伝えていなかった。
隠しているわけではないが、しかしこんななりをしているのだから気付かれていないだろう。
しばらく住まわせてもらうのなら知らせておくべきとも思うが…
だが今さら言い出しづらい。
(どうしようか…)
りいはしばし思案した。
播磨の隠れ里。故郷である。
もうずいぶんひとりで泣いていた。
泣き疲れて、それでもまた涙があふれてくる。
そろそろ戻りたいが、仲間にこのような情けない姿を見せるわけにはいかない。
幼くとも自分は一人前の法師なのだから。
ひとりで生きて行けるのだから。
…ぐすぐすと鼻をすすっていると、ふいに影が射した。
びくりと顔を上げる。
「ああ、こんな所にいたか」
半ば呆れたような笑み。
「お前はなあ…あんまり強がんじゃねえよ。親が死んだんだ、悲しんで当然だろ。…ひとりで泣くな」
そう言って頭に乗せられた無骨な手の温もりを、自分は決して忘れない。
◆
「…道満、さま…」
自分の声で目を覚ました。
目に飛び込んでくる、朝の光。
(夢、か…)
懐かしい夢を見たものだ。
だが浸っている暇はない。今は居候の身、寝坊など言語道断である。
起き上がり、てきぱきと狩衣を身につける。
帯を巻こうとしたところで、ふと手が止まった。
そういえば、<あのこと>を伝えていなかった。
隠しているわけではないが、しかしこんななりをしているのだから気付かれていないだろう。
しばらく住まわせてもらうのなら知らせておくべきとも思うが…
だが今さら言い出しづらい。
(どうしようか…)
りいはしばし思案した。