道摩の娘
参
「…ご様子?」
りいが思わず口を挟むと、超子はかすかにうなずいた。
「魂がどこかにいってしまったようだわ…毎夜ひどく泣くし…」
超子がくしゃりと表情を歪めた。
だが、晴明は眉ひとつ動かさない。
まるで…もとからわかっていたことであるかのように。
「…さあ、晴明」
超子は唇を引き結んで、晴明に向き直る。
晴明は頷き、何気ないことのように、さらりと言葉を発した。
だが、その言葉は…場の空気を凍らせるのに充分だった。
「妹姫様は…超子様とは腹違いですね?」
「…っ!?」
その場にいる誰もが息を呑んだ。
ただひとり、晴明だけが涼しい顔をしている。
「…な、何を…」
なんでも答える、と言った超子も流石に色を失った。
(…?)
りいは、家人たちの態度をいささか不自然に感じる。
たしかに、あまり大声で聞くような話題ではない。まして、超子と詮子は、同じく大臣(おとど)の北の方(正妻)の娘と知られている。
…無礼きわまりないが…だが、腹違いは特段珍しいことでもない。それなのに、ここまで隠そうとすることは過剰にも思えた。
(…あ)
不意に、思い当たる。
天一が言っていたこと。
つまり…詮子の母君はあやかしである、というのか。
…そして、もしそれを、家人が皆知っているのなら。
「…」
晴明が、口元だけでうすく微笑んだ。
りいが思わず口を挟むと、超子はかすかにうなずいた。
「魂がどこかにいってしまったようだわ…毎夜ひどく泣くし…」
超子がくしゃりと表情を歪めた。
だが、晴明は眉ひとつ動かさない。
まるで…もとからわかっていたことであるかのように。
「…さあ、晴明」
超子は唇を引き結んで、晴明に向き直る。
晴明は頷き、何気ないことのように、さらりと言葉を発した。
だが、その言葉は…場の空気を凍らせるのに充分だった。
「妹姫様は…超子様とは腹違いですね?」
「…っ!?」
その場にいる誰もが息を呑んだ。
ただひとり、晴明だけが涼しい顔をしている。
「…な、何を…」
なんでも答える、と言った超子も流石に色を失った。
(…?)
りいは、家人たちの態度をいささか不自然に感じる。
たしかに、あまり大声で聞くような話題ではない。まして、超子と詮子は、同じく大臣(おとど)の北の方(正妻)の娘と知られている。
…無礼きわまりないが…だが、腹違いは特段珍しいことでもない。それなのに、ここまで隠そうとすることは過剰にも思えた。
(…あ)
不意に、思い当たる。
天一が言っていたこと。
つまり…詮子の母君はあやかしである、というのか。
…そして、もしそれを、家人が皆知っているのなら。
「…」
晴明が、口元だけでうすく微笑んだ。