道摩の娘
改めて、安倍邸は大変な家だった。
そこかしこにいる晴明の式神である精霊たち。
名前を覚えるだけで一苦労である。
軒並みりいに好意的であったのは嬉しかったが。
「ええと…松汰だろう、真鯉殿だろう、あやめ殿、紅樹(こうじゅ)殿…」
「あとねえ、櫻木(さくらぎ)に、佳橘(かきつ)に、颯(ふう)に夕立(ゆうだち)!」
庭に面した縁に腰掛けて、松汰に名前を教えてもらう。
「ああ…すまぬ、中々覚えられぬな…」
「仕方ないよー、そのうち覚えるって!」
松汰が明るい笑い声を弾けさせる。
いい子だなあと和んでいると、懐で何か動く気配がした。式神の藤影だ。自分も外に出たくなったのかもしれない。
「…?りいお姉も何か連れてるの?」
松汰が身を乗り出してくる。
「おいら会ってみたいなあ」
りいは苦笑して、木の札を取り出した。
「藤影っ、出ておいで!」
札はつっと宙を滑り、姿を変えた。
札をよりしろに顕現したのは、一羽の鳥。肩に乗るくらいの大きさだが、鷹や隼など猛禽のような見かけをしている。りいが幼いころからともにいる式神である。
藤影は幾度か旋回すると、りいの肩に舞い降りた。久しぶり、とでも言うように、りいの髪を軽く啄む。
松汰は目を真ん丸にして見ていた。
「鳥の霊魂…だよね?ねえこの子怖くない?おいらのことつつかない?」
「そんなことはしない。藤影は賢いんだ。なあ?」
藤影は当然、とばかりに一声鳴いて、松汰にちょこんと頭を下げてみせた。
「うっわああ!すごい!ねえねえ、おいらも触っていい?」
松汰は大興奮である。
藤影がその肩に飛び移った。松汰は恐る恐る手を伸ばし、羽毛に触れた。
松汰と藤影が仲良く触れ合うのを、りいは目を細めて眺めていた。
そこかしこにいる晴明の式神である精霊たち。
名前を覚えるだけで一苦労である。
軒並みりいに好意的であったのは嬉しかったが。
「ええと…松汰だろう、真鯉殿だろう、あやめ殿、紅樹(こうじゅ)殿…」
「あとねえ、櫻木(さくらぎ)に、佳橘(かきつ)に、颯(ふう)に夕立(ゆうだち)!」
庭に面した縁に腰掛けて、松汰に名前を教えてもらう。
「ああ…すまぬ、中々覚えられぬな…」
「仕方ないよー、そのうち覚えるって!」
松汰が明るい笑い声を弾けさせる。
いい子だなあと和んでいると、懐で何か動く気配がした。式神の藤影だ。自分も外に出たくなったのかもしれない。
「…?りいお姉も何か連れてるの?」
松汰が身を乗り出してくる。
「おいら会ってみたいなあ」
りいは苦笑して、木の札を取り出した。
「藤影っ、出ておいで!」
札はつっと宙を滑り、姿を変えた。
札をよりしろに顕現したのは、一羽の鳥。肩に乗るくらいの大きさだが、鷹や隼など猛禽のような見かけをしている。りいが幼いころからともにいる式神である。
藤影は幾度か旋回すると、りいの肩に舞い降りた。久しぶり、とでも言うように、りいの髪を軽く啄む。
松汰は目を真ん丸にして見ていた。
「鳥の霊魂…だよね?ねえこの子怖くない?おいらのことつつかない?」
「そんなことはしない。藤影は賢いんだ。なあ?」
藤影は当然、とばかりに一声鳴いて、松汰にちょこんと頭を下げてみせた。
「うっわああ!すごい!ねえねえ、おいらも触っていい?」
松汰は大興奮である。
藤影がその肩に飛び移った。松汰は恐る恐る手を伸ばし、羽毛に触れた。
松汰と藤影が仲良く触れ合うのを、りいは目を細めて眺めていた。