道摩の娘
弐
「りいお姉ー!」
飛び込んできたのは松汰だ。
泣いたのだろうか、頬が真っ赤で、目もとも赤い。
「りいお姉、ごめん、ごめんなさい…おいらがりいお姉を止めなきゃいけなかったのに」
言いながらまたぼろぼろ泣き出す。
「いや、松汰のせいじゃない。私が勝手にあいつについて行ったんだから」
「だ、だってえ…ひっく」
そんな松汰に苦笑しつつ、りいは松汰の頭をぽんぽんと叩いた。
「ほら、ご覧のとおり私は無事だ。泣かないで」
肩に走った激痛は無視して笑ってみせる。
「お姉ー…」
「松汰…りいさんはお怪我をなさっているのよ?あまり甘えてはりいさんのお体に障るでしょう」
松汰の背後からたおやかな声がした。
「真鯉お姉」
松汰が振り返る。
「りいさんも。まだあまりご無理をなさらないでくださいな」
心配そうな表情を浮かべる真鯉。
罪悪感が刺激され、思わずりいもすみません、とつぶやく。
「お粥を炊いたのですけど、召し上がれますかしら。無理そうなら重湯をお持ちします」
真鯉が運んで来た膳を下ろした。
椀の中には粥が湯気を立てている。
「食欲がないかもしれませんが、少しでも召し上がらなくては。お怪我も軽くはありませんし、三日も寝込んでいらっしゃったのですよ」
「みっか!?」
思わずりいは聞きかえす。
三日も眠り続けたなど、人生で初めてのことだ。
晴明の術が効き過ぎたのだろうか。
いずれにしても時間を無駄にした悔しさに歯噛みする。
(この時間があれば万尋様を追って…)
「駄目だよお姉」
松汰が心を読んだかのように言う。
「また無茶しようとしてるでしょ?駄目だからね、ちゃんと治して」
涙のあとが残る頬を膨らませる松汰。
「松汰の言う通りです」
真鯉も、おとなしく控えていた藤影もが頷く。
(かなわないな…)
心を覆う悲しみが少し癒された気がした。
飛び込んできたのは松汰だ。
泣いたのだろうか、頬が真っ赤で、目もとも赤い。
「りいお姉、ごめん、ごめんなさい…おいらがりいお姉を止めなきゃいけなかったのに」
言いながらまたぼろぼろ泣き出す。
「いや、松汰のせいじゃない。私が勝手にあいつについて行ったんだから」
「だ、だってえ…ひっく」
そんな松汰に苦笑しつつ、りいは松汰の頭をぽんぽんと叩いた。
「ほら、ご覧のとおり私は無事だ。泣かないで」
肩に走った激痛は無視して笑ってみせる。
「お姉ー…」
「松汰…りいさんはお怪我をなさっているのよ?あまり甘えてはりいさんのお体に障るでしょう」
松汰の背後からたおやかな声がした。
「真鯉お姉」
松汰が振り返る。
「りいさんも。まだあまりご無理をなさらないでくださいな」
心配そうな表情を浮かべる真鯉。
罪悪感が刺激され、思わずりいもすみません、とつぶやく。
「お粥を炊いたのですけど、召し上がれますかしら。無理そうなら重湯をお持ちします」
真鯉が運んで来た膳を下ろした。
椀の中には粥が湯気を立てている。
「食欲がないかもしれませんが、少しでも召し上がらなくては。お怪我も軽くはありませんし、三日も寝込んでいらっしゃったのですよ」
「みっか!?」
思わずりいは聞きかえす。
三日も眠り続けたなど、人生で初めてのことだ。
晴明の術が効き過ぎたのだろうか。
いずれにしても時間を無駄にした悔しさに歯噛みする。
(この時間があれば万尋様を追って…)
「駄目だよお姉」
松汰が心を読んだかのように言う。
「また無茶しようとしてるでしょ?駄目だからね、ちゃんと治して」
涙のあとが残る頬を膨らませる松汰。
「松汰の言う通りです」
真鯉も、おとなしく控えていた藤影もが頷く。
(かなわないな…)
心を覆う悲しみが少し癒された気がした。