道摩の娘
参
「なん、だと…?」
「あれは、単純なまじないで騙せる程度のあやかしだよ。そこまで賢しい行動をとるはずがない」
晴明はよどみなく説明する。
「なるほど…ん、待ってくれ」
頷きつつ聞いていたりいは、ふと引っ掛かりを覚えて口を挟んだ。
「まさか…その裏が、万尋様、だなどと」
「さあ」
しかし晴明からはなんとも気の抜けた答えが。
「さあって…」
「そこを突き止められないから陰陽寮は手を焼いてるんだよ…ただ、俺はその可能性はあると思う」
晴明は多少歯切れ悪く先を続ける。
「あやかしの餌にするなら、純粋な子供のほうがいいんだろうし…妖気が出たり消えたりすることも、体内に飼ってるなら説明がつくし…でも、貴族の姫ばかり狙う理由がわからない」
確かに、貴族の子供と庶民の子供では、普通に考えて庶民の子供のほうが襲いやすいだろう。
「俺、結構京を見て回ったりしてたんだけど、貴族以外でそんな話はなかった」
「そうか…」
そんな不条理の理由などりいもさっぱり見当がつかない。
しばし考えこんでしまう。
「まあ、それはともかく。…ひとつ言えるのは、」
一呼吸おいて、晴明が話題を変えた。声を低くする。
「裏があの人でもそうじゃなくても、今後あの人は貴族の姫を襲うはずだ」
「何っ!?…うっ」
りいはあまりのことにまたしても身を乗り出し、走った激痛に悶絶する。
「…つくづく学習しないよねえ」
厭味というより本気で感心している様子の晴明の言葉である。
「…放っておけっ…今なんとっ」
「あの人貴族の姫を襲うよって。少なくとも俺ならそうする」
「あやかしの…餌を求めて?」
「そう。あの人が関係なくても、先に京で騒ぎが起きてるんだから、それを利用しない手はないよね?」
「…ああ…」
「あれは、単純なまじないで騙せる程度のあやかしだよ。そこまで賢しい行動をとるはずがない」
晴明はよどみなく説明する。
「なるほど…ん、待ってくれ」
頷きつつ聞いていたりいは、ふと引っ掛かりを覚えて口を挟んだ。
「まさか…その裏が、万尋様、だなどと」
「さあ」
しかし晴明からはなんとも気の抜けた答えが。
「さあって…」
「そこを突き止められないから陰陽寮は手を焼いてるんだよ…ただ、俺はその可能性はあると思う」
晴明は多少歯切れ悪く先を続ける。
「あやかしの餌にするなら、純粋な子供のほうがいいんだろうし…妖気が出たり消えたりすることも、体内に飼ってるなら説明がつくし…でも、貴族の姫ばかり狙う理由がわからない」
確かに、貴族の子供と庶民の子供では、普通に考えて庶民の子供のほうが襲いやすいだろう。
「俺、結構京を見て回ったりしてたんだけど、貴族以外でそんな話はなかった」
「そうか…」
そんな不条理の理由などりいもさっぱり見当がつかない。
しばし考えこんでしまう。
「まあ、それはともかく。…ひとつ言えるのは、」
一呼吸おいて、晴明が話題を変えた。声を低くする。
「裏があの人でもそうじゃなくても、今後あの人は貴族の姫を襲うはずだ」
「何っ!?…うっ」
りいはあまりのことにまたしても身を乗り出し、走った激痛に悶絶する。
「…つくづく学習しないよねえ」
厭味というより本気で感心している様子の晴明の言葉である。
「…放っておけっ…今なんとっ」
「あの人貴族の姫を襲うよって。少なくとも俺ならそうする」
「あやかしの…餌を求めて?」
「そう。あの人が関係なくても、先に京で騒ぎが起きてるんだから、それを利用しない手はないよね?」
「…ああ…」