リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・5(野球)
すると校門の所で、彼が自転車に乗ってそこにいた。

「あれ? どうしたの? 部室に忘れ物?」

「いやその…。おっ送ってく」

「えっ? わたし?」

「お前の他に誰がいるんだよ? ホラ、荷物」

「うっうん、ありがとう」

自転車の前籠に荷物を入れて、わたしは後ろに座った。

「ちゃんと捕まってろよ」

「重かったら言ってね? そんなに家、遠くないし…。あっ、家の場所はねぇ」

「…知ってる」

「えっ? 通り道?」

わたしの家は学校から歩いて20分程度。

でも行く時も帰る時も、彼の姿を見たことはない気が…。

「~~~っ! いいから、行くぞ!」

「えっ、わぁ!」

自転車がいきなり動き出したので、わたしは思わず彼の腰にしがみついた。

何とか安定して自転車は進んでいるので、一安心。

…フラフラさせては、女の子のプライドに傷が付いていただろう。

流れる風が気持ちよかった。

二人とも会話はなかったけれど、心地良い雰囲気のまま、家に到着した。

「明日も同じ時間でいい?」

「ああ。その…迎えに来るから」

「えっ? 悪いからいいよぉ」

20分ぐらい、散歩代わりになる。

けれど何故か彼は顔を真っ赤にして、怒鳴った。
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