リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・5(野球)
ちょっと切なくなって、彼の背中に顔を押し付けた。

彼はわたしが何をしても何も言わない。

そのことがありがたかったけど、寂しくもあった。

彼との距離は、一定を保ったまま、前にも後ろにも進めていない。

その方がいいはずなのに、何で望んでしまうんだろう?

答えの出ない問いを頭の中で繰り返しているうちに、学校へ到着した。

彼の前では明るく振る舞わなくてはならない。

マネージャーは何時いかなる時でも、平常心を保っていなければならないから。

「今日も良い天気♪ 外で食べる?」

「だな。部室の前で食べよう」

「うん!」

彼と二人きりになるのは久し振りだった。

特に今みたいに、部活抜きなのはかなり。

会話はお互い部活のことだけど、それでも楽しかった。

部室の前で、いつかのように二人並んで座って、お握りを食べた。

「…何か久し振りだよな、こういうの」

「そうだね。かなり忙しかったし」

彼は部員として、わたしはマネージャーとして多忙を極めていた。

それでも毎日会話はしていたし、顔も見合わせていたはずなのに…。

満足できていないわたしは、おかしいんだ。
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