リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・5(野球)
「やっ!」

球はストレート。しかしその速さは部長をも追い抜く。

しかし彼の眼は真っ直ぐ球を捉えていた。

彼が動く。

そして―

カッキーン!

…ホームランを、打たれてしまった。

「…ウソ?」

わたしは呆然と球の行方を見た。

ああ…コレが部長の味わった気持ち。

さっさすがにプライドが…。

「よっしゃ!」

あっ、でも彼は喜んでいる。

そりゃそうだよね。

部員達の間では『無敗の女王』とまで言われたわたしに、勝てたんだから。

…もしかして、自信をつける為に彼は勝負を挑んできたんだろうか?

誰も勝つことができなかったわたしに勝てば、かなりの自信がつく。

その為に、今まで練習に誘ってこなかったのかな?

その可能性は…かなり、ある。

「おっおめでとう」

プライドにヒビが入るのを感じながら、わたしは固まった笑みを浮かべた。

「ああ、勝てた!」

彼はバットを投げ捨て、わたしの元へ駆けつけた。

「なっなあ、1つ言うこと聞いてくれるんだよな?」

「えっええ、わたしにできることなら…」

練習メニューを変えることとかは、顧問や部長に相談しなきゃいけないけど…。

一日ぐらい休むことや、お弁当メニューを彼好みに帰ることぐらいなら、わたしでもできることだ。
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