リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・5(野球)
「じゃあ、あのさ」

彼はわたしの肩を掴み、赤い顔で目を覗き込んできた。

「よかったら…オレと付き合ってくれないか?」

「えっ? どこへ?」

がくっと項垂れる姿を見るのは、今日で二回目だ。

「何でこんな時までボケるんだよ…」

「ボケるって…」

「だからさっ!」

顔を上げた彼は、思っているより間近にあった。

「あっ…」

「っと…」

あとちょっとの距離で、唇が触れそうになる。

肩を捕まれているから、余計に近い。

だから顔を背けると、肩を揺さぶられた。

「…逃げんなよ」

「逃げてなんかない!」

「逃げてる! 前よりオレに構わなくなった!」

「子供みたいなこと、言わないでよ。マネージャーの仕事、忙しいの。わたしにマネージャーを頼んだのは、あなたでしょう?」

「それはお前に側にいてほしいからだよ!」

至近距離で怒鳴られ、耳がビリビリする。

「なのにマネージャーの仕事を理由に、お前は離れていった。…何でだよ?」

「何でって…」

マネージャーの仕事に専念したかった。

彼と特別な関係になることを恐れていたから…。

そう…逃げていた。

離れていたのは彼じゃない。

わたしなんだ。
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