秘密
◆◆◆




「なんだコレ?」

鍵穴に鍵を差し込もうとしたら、ドアノブにさげてあるそれに気づいた。

……まさか爆弾?

何気に敵が多い俺。
何故ならそれはモテるから。
ははは。

冗談はさておき、一体なんだ?コレは。

取り出し、ゴソゴソと中を確認中…
バイト先の持ち帰りの容器みたいなその中身は…

…こ…これは…
…伝説の…手作り弁当…

何かの間違いじゃないかと思い、辺りをキョロキョロと見渡す。

俺の家を知ってる奴はあまりいない、他人には教えたくないから。

一人暮らしだと溜まり場になるし、いつでも女が押し掛けて来たりして、色々と面倒な事が多いらしい、と兄貴が一人暮らしを始める前に俺にそう言ってきた。

どちらかと言うと、普段はまったりのんびりな俺。

バイトで疲れて帰ってきて、騒がれたり、押し掛けられたりしたら大変に迷惑。

俺の家を知っていて、弁当を届けてくれそうな奴……

……もしかして…奏?

それ以外考えられない。

…ウソ?マジで?
わざわざ朝早くにここまで弁当届けてくれたのか?

携帯を取り出し、昨日アドレスに追加された、奏に電話をかける。
暫く呼び出すけど、留守電に切り替わった。

とりあえず登校しないと、遅刻してしまう、ドアの前で自問自答していても始まらない。

アパートを出てバス停に向かう途中、携帯が震動し、見ると奏からのメール。

『おはよう

今バスに乗ってるから
電話取れなかった
ごめんね』

速攻返信。

『おはよ

弁当ありがと』

もう奏の弁当だと決め付けてる俺。いや、そうに決まってる。

『よかったら
食べてください』

……奏。

好きな子からの手作り弁当…
誰もが一度は夢見るはず。

…その夢が今、現実に…
……生きててよかった…

弁当を胸に抱き、感動の涙を流す俺。

いや、実際そこまではしてないけどね?
近いものはあるが…

弁当なんて中坊以来だな。
以前は毎日母さんの弁当に飽き飽きだったけど、一人暮らしを始めてから、その有り難みがわかった。


今度、母さんに服でも買ってやろうかな?



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