秘密


「今日は無理、バイトだから」

宮地が俺と奏の間に割って入る。
どけよ宮地、奏の顔が見えないだろ?

「あと一回位は練習したかったんだけど、佐野、昨日途中で抜けたから」

「ああ、わり。そしたら土曜の午後からやんね?」

「わかった、みんなにそう言っとく、でも佐野ってバスケ上手いよな?バスケ部より上手かったし、マジで優勝出来るかも?はは」

「…はは。そんな事ないない」

「奥村さん、女子も土曜日一緒に練習しようか?」

と奏を振り返る宮地。

「うん。私は構わないよ」

「奏、目眩するとか言ってたのに大丈夫か?」

宮地の身体を押し退け、奏を見る。

「大丈夫だよ、ただの寝不足、昨日は早く寝たから、今日は元気」

「あ、奥村さん昨日倒れたんだよね?大丈夫だった?」

「うん。大丈夫、たんこぶ出来たけどね」

「たんこぶ?奥村さんがたんこぶ?」

何故二回言う?

「うん。ここ、触って?」

奏は宮地に向けて、そこを指差す。

「えっ?いいの?」

「うん。あ、でも強く押さないでね?」

宮地はズボンで手汗を拭うと、恐る恐る奏の頭に手を伸ばす。

「…何?…佐野」

宮地が伸ばした手を掴んでしまった俺。

「……今日の占い」

「は?」

「今日の占いで朝イチで男の腕掴むと、運気が上がるって…」

「はあ?何それ?」

「ありがとう宮地、お陰で運気が上がった」

奏に気安く触るな。

「…は〜い。席着け〜」

数学の長谷川が教室に入ってきた。
宮地は渋々席へと戻っていく。

…奏は天然の上に無防備だと思う、昨日もショートパンツとか履いてるし…
触って、とか言ったらダメだろ?

教科書を出しながら、チラリと奏を横目に見ると、俺の机の横目にさげた紙袋を見ていて、次に俺の顔を見ると、目が合った。

『ありがと』

また口パクで話すと今度はちゃんと伝わったらしく、ニッコリと微笑んだ。

…ヤバイ笑顔だ。

ますます奏に惹かれていく。

昨日、嫌じゃないと言ってくれた。
それは当然そう言う関係になってもいいと言う事で…

……いかんいかん。

朝っぱらから何考えてるんだ俺は…

………反省。


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