秘密
◆◆◆



こう言う時って嫌でも思い知らされるな…

所詮俺は浮気相手だって事。

あの肩に置いある佑樹の手を振りほどいて、俺の方を向いてほしい。

そんな事を考えて、二人の背中を見送っていたら、奏がチラリと俺の方を振り返った。

その顔はまるで、ごめんね。と言っているようで、俺は軽く手をあげてそれに答えた。

…佑樹め

この間といい、邪魔ばかりしやがる。

結局返事は聞けず終い。

いきなり泊まりでとかマズかったかな?
でも母さんが毎週のように奏連れて来い、連れて来いって…

……はぁ。

俺の彼女だと思ってるから仕方ないんだけどね?

兄貴と俺の名前からしてわかるように、母さんは女の子が欲しかったらしく、いたく奏の事を気に入ってしまった。

一緒に買い物に行くんだとか、洋服買ってやるんだとか。

何と奏のパジャマまで用意している始末。

奏が俺の彼女じゃないって知ったら、多分殺されるな俺、うん。


二人の後を追って教室に戻る気にもなれず、再び屋上へと続く階段を上がり出した。


ドアを開け空を見上げると、少し暑い位の陽射しに目を細める。


こんな日に奏と二人でバイクに乗って何処かへ出掛けたい。

誰の目も気にせずに、ずっと一緒に居られたらな。


さらに高い貯水タンクのある位置まで梯子を登り、ゴロリと横になる。


流れる雲を眺めてると、五時間目が始まるチャイムが鳴った。

…五時間目。
サボる事に決定。
もう一眠りしよ。

腕を枕にし横向きになると、ブレザーのポケットの携帯が震動して、取り出し開くと、奏からのメール。


『さっきはごめんね
五時間目はサボリかな?
土曜日行きます
よろしくお願いします』

『了解。家に連絡しとく
母さん喜ぶよ
無理言ってごめん
今屋上、昼寝延長
おやすみ』


携帯を閉じると、ブレザーにしまう。

ここに誰も居なくてよかった。
今の顔、多分だらしなくニヤケてるだろうから。

土日は奏とずっと一緒に居られる。
またあの時みたいに、沢山の笑顔が見れるかな?


そんな事を考えている内に、次第に瞼が重くなり、意識が遠のいていった。


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