秘密
「ごめんね、相手にしなくていいから、何飲む?」
「あ。あたし、カシスオレンジ♪」
「未成年の飲酒は、法律で固く禁じられています」
「……佐野君のケチ、何でもオゴってくれるって言った癖に…」
と、口を尖らせ呟く美樹ちゃん。
「…美樹ちゃん、オレンジジュースね。奏は?」
「私は烏龍茶」
「他は?何か食いたい物ある?」
「う〜ん…サラダ系が食べたいかな?美樹ちゃんは?」
「豚キムチ!」
「…サラダ系ね…シーフードでいい?」
「うん」
「了解。他にもなんかあったら遠慮しないで何でも注文していいから、ゆっくりしてってね」
言うと佐野君はカウンターに下がって行った。
「佐野君って、意外と頭固いね?今時高校生だってお酒位飲んでるのに…」
「佐野君は真面目な人だよ?それに私もお酒なんて飲んだ事ないし…美樹ちゃんお酒飲めるんだ、凄いね」
「凄くないよ、拓也なんかザルだよ?ザル…」
「へぇ。拓也君が…凄く意外…」
「でしょ?よくうちの父親と晩酌してんの、あんな顔の癖に…」
「あはは。あんな顔って、美樹ちゃん」
「肌なんかあたしよりツヤツヤしてんのよ?ムカつくと思わない?かなちゃん」
「確かにそれはムカつくね?」
「でしょ?あははは♪」
楽しい。
いつもと違う雰囲気と、美樹ちゃんとのお喋り。
チラリと横を見れば佐野君が、忙しそうに仕事してて、時々目が合ったりして。
徐々に騒がしくなっていく店内。
恭介さんも時々私達のテーブルにやって来て、笑わせてくれたり。
スキンヘッドのマスターさんは、見た目は怖い人に見えるけど、とても優しい人で、佐野君は毎日こんな感じでバイトしてるんだと思って、また違った佐野君を発見してしまった私は、それがとても嬉しくて、いつもよりはしゃいでしまっていた。
とても幸せな気分だ。
佐野君と出逢ってから、色々な楽しい事や幸せな気持ちを体験した。
美樹ちゃんとも以前より凄く仲良くなれた。
全部佐野君に出逢ってから。
佐野君。
私、佐野君に出逢えてホントによかった。
佐野君。ありがとう。
大好き。