秘密
「……そんな事……私、何もしてません」
静さんの話を聞いた私は、涙が出そうになった。
佐野君の過去は佐野君から聞いて、知ってるつもりだったんだけど、静さんから聞いた話しは、佐野君がどれだけバスケが大切で大好きだったのか凄く伝わってきて、私は胸が苦しくなった。
「あはは。好きな娘の為なら、何でも前向きになれるんだよ?男って単純な生き物たから、奏ちゃんの為に、いつまでもこのままじゃダメだって思ったんだろ」
そう言って佐野君とよく似た優しい笑顔で笑う静さん。
……好きな娘?
私が?佐野君の好きな娘?
あ。そうか…
静さんは私を佐野君の彼女だと思ってるからそう言ったんだ。
……でも…
凄く嬉しく思えるのは、たとえそれが静さんの勘違いでも、私と佐野君が恋人同士として、静さんの中に存在してると言う事。
私達の複雑な秘密の関係も、静さんの前では秘密にしなくてもいいんだ。
佐野君には言えないけど……
「…私も、佐野君の事…大好きです…」
「ははは。ご馳走さま、それ、茜に言ってやってくれ」
「…恥ずかしくて、言えません、静さんも今私が言った事、佐野君には秘密にして下さいね?」
きっと赤くなってる顔で静さんを見上げると、
「はは。了解。でも、お願いする時は?なんて言うんだっけ?」
「お兄ちゃんお願い」
「良くできました♪お兄ちゃんと奏ちゃんの二人の秘密、な?」
「…はい」
優しく私の頭を撫でてくれる静さん。
お兄ちゃんかぁ…
私もこんなお兄ちゃんが欲しいな。
佐野君が羨ましい。
「……兄貴、何してるの?」
窓辺に立つ私達の後ろから佐野君の声がして、振り替えるとまたもや上半身裸の佐野君。
慌ててうつ向く私。
「何って?いい子いい子してんの♪」
「全く、油断も隙もない…奏に触るな、バカ静」
佐野君が静さんの手を叩く。
「あっ!またバカって言った、アホ茜!」
「わ、私、着替えてくるね?」
洋服を掴みバスルームへと駆け込む私。
……佐野君。
裸なんだもん、目のやり場に困っちゃうよ……