秘密
モール内を徘徊する事約一時間。
奏は真剣に服を選んでいた。
自分の物でも無いのにあの真剣な表情。
うちの母さんの服を選ぶのがそんなにブレッシャーなのか?
……腹減ったな…
「よし!コレにする!」
やっと決まったらしい。
「どれ?」
「えへへ、このワンピ、佐野君のお母さんに似合うと思うな」
ハンガーを持ち上げて俺に見せる奏。
服の事はよくわからないけど、薄い水色の夏っぽいワンピース。
うん。
地味でも派手でもなくて、いい感じ、さすが奏。
「決まった?」
兄貴も待ちくたびれた様子。
「うん。金払ってくる」
「あ、待って私も」
言うと奏は棚に陳列された箱を取り、俺とレジへと向かう。
「何?それ?」
「これは私からお母さんに、コサージュだよ。始めにこのコサージュに目がいっちゃって、コレに合う洋服選んでたの」
「コサージュ?」
「ほら、こんなのだよ」
透明の箱を見ると中には、レースとかビーズ?とか使われていて、ふわっとした感じの拳位の大きさの白い花。
うちの母さんにと言うよりは、奏に似合いそうな花だ。
「そんな気使わなくていいのに…」
「違うよ、私がそうしたいの、お母さん喜んでくれるかな?ふふふ」
手に持ったコサージュのように可憐に可愛く笑う奏。
「…ありがと、母さん、喜ぶよ」
「ホントに?だったら嬉しいな」
レジでそれぞれプレゼント用に包装してもらい、店の外で待つ兄貴と合流。
「兄貴?手ぶら?」
「俺のは明日家に届くよ」
「何買ったの?」
「最新式のオーブンレンジ、この頃調子悪いって言ってたからな」
「……高かっただろ?」
「まあ、それなりに、でも、旨い飯食わしてくれるしな、この位の投資はしないとな?ははは」
「……さすが大人…」
「あ♪奏ちゃんあっち行ってみよう」
兄貴は奏の手を引いてスタスタと歩き出した。
「あっ。コラ。兄貴どこ行く?」
てか、奏の手を離しやがれ。
それは俺のだ。
奏は兄貴に引っ張られ、連れて来られたのは、
「お兄ちゃんが奏ちゃんに水着買ってあげる♪」
水着のショッブだった。