秘密


「と、まあこんな訳で、色々あって、お互い嫌な思いもして、人を傷付けたりもしたけど…それでも美樹と一緒に居たいから、頑張って努力した訳…」


拓也は空きカンをゴミ箱に投げ入れると、


「…はい。説教終り」

そう言って俺の頭を軽く小突く。

「…まあ…缶コーヒー1本分位の…価値はあったかな?」

「たったそれだけ?飯位奢れよ」

「はは…今度な」

「あ。カケルさんの新しい店でいいよ、ケーキ♪ケーキ♪」

「げ。ケーキ?」

「うん。ワンホール位軽く食えるぞ?俺、最近は行ってないけど、美樹とバイキングによく行ってなぁ…ああ、思い出したら食いたくなってきた」

「…よくあんな砂糖の固まり食えるよな?」

「あっ、そんな事言って、もしかなちゃんがお前の為に、手作りケーキとか作ったら、どうすんだよ?」

「…う…それは…」

「特訓だな…よし!7月7日!決戦は木曜日だ!晴れるかな?あはは♪」


なんか無茶苦茶な展開だけど、拓也とケーキを食いに行く羽目に。

ああ…考えただけでも胸焼けが…


「あっ、二人戻ってきた、お〜い、こっち!」


拓也が手を振って、その先には美樹と奏。


「お待たせ〜、叫びすぎて喉乾いた、拓也、オレンジ」


言うと美樹は拓也の隣に。


「奏は?何か飲む?」

「うん。紅茶」

「了解」


立ち上がり自販機で紅茶を買って奏に渡す。


「ありがとう、佐野君」

缶を開けゴクゴクと喉を鳴らして飲む奏。

「次はいよいよアレ行くか?」

拓也が自販機に小銭を入れながら、

「アレって?」

俺がそう聞くと。

「アレだ!」

その指差す先は。

【恐怖!戦慄の廃病棟!black.hospital】

このパーク自慢のリアルな建物で作られた三階建てのいわゆるお化け屋敷。

まあ、定番だな。
絶叫系も乗り尽くしたし、そろそろいいか。

「ここのお化け、今一迫力に欠けるんだよね…」

と、ぼやく美樹。

「せっかくフリーパス買ったんだから、全部乗らないと勿体ないだろ?」

「…だよね?かなちゃん、次あれ行こう」


見ると奏は無表情で固まっていた。





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