秘密
「お〜い、かなちゃ〜ん」
奏の顔の前で手を降る美樹。
「…はっ…何?」
「次、あれ行くよ?」
美樹はお化け屋敷を指差す。
「う、うんっ。行こうっ」
奏は立ち上がるとそっちに歩き出して。
ん?
手足が同時に出てる?
俺は奏に追い付き。
「奏?もしかして、お化け屋敷苦手?」
「…にっ、苦手かも知れないけど、一度も入った事無くて、案外入ってみたら、苦手じゃ無いかも知れないしっ、苦手かそうじゃないかは、入ってから決まるのですっ!」
…何を言ってる?奏…早口言葉?
「だから、苦手なんだろ?無理しなくても…」
「いえっ、苦手じゃ無いかもっ…知れないっ」
……だから、それが苦手って言うんだって…
「よしっ!一人づつ入ろうぜ♪誰が一番最初にゴールするか!」
「あっ、それいい!やろうよ面白そう♪」
ノリノリな拓也と美樹。
「ちょっ、それはいくらなんでも…」
奏が……
「あら?怖いの?佐野君?」
………カチン。
「怖い訳無いだろ?」
「じゃあ、勝負する?」
「上等だ、俺に勝とうなんて、一万年とニ千年早いよ?美樹ちゃん…」
「あはは、言ったわね?あたしこのアトラクション10回以上クリアしてるんだから、負けないわよ?」
「丁度いいハンデだ」
「やっぱり佐野君、勝負事に弱いわね?扱いやすい、ふふ…」
不適な笑みを浮かべる美樹。
そんな顔をされちゃ絶対に負けらんねぇ…
「ただし、勝った方には何かメリットがあるのか?」
「そうねぇ、負けた人は勝った人の言う事を何でもひとつだけ聞くってのは?」
「面白い、それでいいよ」
「わかった…ふふふ、楽しみ」
「あのさ?」
「何だよ?拓ちゃん」
俺は美樹と睨み合ったまま。
「かなちゃん、先に一人で入ってったよ?」
「えぇっ?!」
奏はリタイヤさせるつもりだったのに。
「早く言えよっ!」
「だって、二人で火花散らしてるんだもん、邪魔しちゃ悪いかなって…」
「ああっ!もうっ!」
慌ててパスを見せて中に入る。
「ちょっと!佐野君!約束だからね!」
背中で美樹の声を聞きながら、真っ暗な中を急いで歩いた。