秘密
「奏っ!…ウザい退けっ」
奏の名前を呼びながら、ウザいゾンビの頭を軽く叩く。
中は幾つもの部屋に分かれてて、奏を探すのは大変そうだ。
ひとつひとつドアを開けながら先を進む。
鏡の中から手が出たり、床に這いつくばる女や、油絵が動き出したりしてるけど、全部スルー。
……何処だ奏?
「きゃあぁあ〜っ!佐野君っ!」
「奏っ?!」
奏の俺を呼ぶ声が聞こえてきて、そっちの方に向かうけど、ゾンビが、アーアーうるさくて、中々先に進めない。
「ちょっとは怖がれよ…」
なんて、ゾンビのぼやきが聞こえたけど、そんな事知るか。
あ。
待てよ、ゾンビに聞けばいいんじゃね?
俺はピタリと足を止めて後ろを振り返る。
「なあ、ゾンビ、髪が長くて綺麗な女の子どこ行ったか知らない?」
すると顔の皮が半分捲れたゾンビは。
「あ。あっちの方に走って行きました」
と非常階段とランプが点滅している廊下の奥を指差した。
あっちか、二階に上がったみたいだな?
「サンキュー、ゾンビ、ありがと」
「いえ…」
照れたように頭をかくゾンビに手を降り、非常階段を上に上った。
二階は病室が沢山。
ひとつひとつ見ていく。
ボロボロのベッドが4つ並んだ部屋の奥に小さく蠢く影を発見。
薄暗い中よく見てみると、奏が踞っていた。
……よかった見つけた。
近付いて声をかける。
「…かな…」
「!っ、きゃあぁーっ!助けて助けて助けて、佐野君っ、怖いようっ…うぇっ…」
益々小さくなりガタガタと震えだした。
「…奏、俺だよ」
後ろから抱きしめる。
「!…佐野君っ」
奏は向きを変えて俺にしがみついてきた。
「佐野君、佐野君、怖かったようっ…ふぇ〜…」
奏の背中を擦りながら、
「よしよし…もう大丈夫」
暫く撫でてやり少し落ち着いてきた様子。
勝負もあるしそろそろ行かないと。
「奏?行こうか?」
「……うん。早く出たい」
奏の手を取り立ち上がるけど、奏は座ったまま、
「…た、立てない…」
腰抜けたんだな…奏。