秘密


「奏っ!…ウザい退けっ」

奏の名前を呼びながら、ウザいゾンビの頭を軽く叩く。

中は幾つもの部屋に分かれてて、奏を探すのは大変そうだ。

ひとつひとつドアを開けながら先を進む。

鏡の中から手が出たり、床に這いつくばる女や、油絵が動き出したりしてるけど、全部スルー。


……何処だ奏?


「きゃあぁあ〜っ!佐野君っ!」

「奏っ?!」


奏の俺を呼ぶ声が聞こえてきて、そっちの方に向かうけど、ゾンビが、アーアーうるさくて、中々先に進めない。


「ちょっとは怖がれよ…」


なんて、ゾンビのぼやきが聞こえたけど、そんな事知るか。

あ。

待てよ、ゾンビに聞けばいいんじゃね?

俺はピタリと足を止めて後ろを振り返る。

「なあ、ゾンビ、髪が長くて綺麗な女の子どこ行ったか知らない?」

すると顔の皮が半分捲れたゾンビは。


「あ。あっちの方に走って行きました」


と非常階段とランプが点滅している廊下の奥を指差した。

あっちか、二階に上がったみたいだな?


「サンキュー、ゾンビ、ありがと」

「いえ…」

照れたように頭をかくゾンビに手を降り、非常階段を上に上った。

二階は病室が沢山。
ひとつひとつ見ていく。

ボロボロのベッドが4つ並んだ部屋の奥に小さく蠢く影を発見。

薄暗い中よく見てみると、奏が踞っていた。

……よかった見つけた。

近付いて声をかける。

「…かな…」

「!っ、きゃあぁーっ!助けて助けて助けて、佐野君っ、怖いようっ…うぇっ…」


益々小さくなりガタガタと震えだした。


「…奏、俺だよ」


後ろから抱きしめる。


「!…佐野君っ」


奏は向きを変えて俺にしがみついてきた。


「佐野君、佐野君、怖かったようっ…ふぇ〜…」

奏の背中を擦りながら、

「よしよし…もう大丈夫」

暫く撫でてやり少し落ち着いてきた様子。

勝負もあるしそろそろ行かないと。

「奏?行こうか?」

「……うん。早く出たい」

奏の手を取り立ち上がるけど、奏は座ったまま、

「…た、立てない…」


腰抜けたんだな…奏。






< 292 / 647 >

この作品をシェア

pagetop