秘密


いつまでもここに居る訳にもいかない。


奏も相当怖がってるし早くゴールしないと。


俺はしゃがみ込んで。


「おんぶと抱っこ、どっちがいい?」


奏は俺の顔を見上げると、


「…あ……」


そのまますうっと力が抜けたように、俺に倒れ込んできた。


「えっ?…ちょっ、奏っ?」


どうやら失神してしまったらしい。


後ろを振り返って見てみると、さっき道を教えてくれたゾンビ。


「かなり怖がってるみたいだったから…リタイヤしてもらおうかと思って来たんですけど…余計に怖がらせてしまいましたね?…すみません」


ゾンビはペコリと頭を下げた。


俺は深く息を吐くき、奏を横抱きに抱えた。


「ね?ゾンビ、最短ルート教えてよ?」

「え?でも…」

「早くゴールしたいんだよ、この子も心配だし」

「だったらリタイヤ…」

「それだけは勘弁、今連れとどっちが早くゴール出来るか競ってんだよ、ね?お願い」

「そうなんですか…その子も失神させちゃったし…はい。わかりました、着いてきてください…」

「ありがと、ゾンビ」

「あの僕の名前、ジャックって言うんです…」

「わかったよ、ジャック、早く行こうぜ?」


ジャックがリアルなマスクの下からニコッと笑ったような気がした。


ホントよく出来てんな、このマスク、本物みてぇ。


ジャックの後に続いて、一階に戻り再び違う所から二階に上がり、鏡の中をくぐり抜け、その先の階段を上がり、三階の霊安室の冷蔵庫の隠し階段を下りて一階へ。


なるほど、簡単には攻略出来ないようになってる


暫く歩くとドアが見えてきて。

「あそこが出口です…」

「ありがと、ジャック、じゃあな」


手を降るジャックを背中にドアを開けると、眩しさに目を細める。


どうやら病棟の裏手の出口らしい。


確か出口は三つあった筈。


美樹も攻略してたら正面入口で待ってるだろう。


正面入口に行くけど美樹の姿は無かった。



…ズルしたけど誰も見てないし。


とりあえず俺の勝ち。


ははは。




< 293 / 647 >

この作品をシェア

pagetop