秘密


「おっ?」


佐野君が立ち止まって見たのはバイクレースのゲーム。


「…俺コレやる」


すると横から拓也君が、


「佐野!今度は俺と勝負だ!」


隣のバイクに飛び乗った。


「コレなら誰にも負けない!峠のYAMAHA使いの俺に勝とうなんて一万年と…何年だっけ?…とにかくっ!早いっ!わははは!」


…いつもの拓也君じゃない…


「はっ?YAMAHA?ミーハーだな?峠はHONDA CBRだっ!」


…いつもの佐野君じゃない…


「よしっ!行くぞ!」
「かかって来いっ!」


なんだかわからないけど、今度は佐野君と拓也君が勝負を始めてしまった。


二人の後ろから見守る私。


「あ、拓也何やって…って、佐野君と対戦?」


美樹ちゃんがやって来て、


「うん。何か二人供人が変わったみたいに…」

「あはは、拓也はこのゲームで満点出した事あるんだよ?佐野君が勝つ筈無いよ」

「え?ホントに?拓也君凄い…」


見ると拓也君は障害物にもぶつからず、グングンとスピードを上げていく。

一方佐野君は……


「あぁっ?!なんだよコレ!ブレーキ壊れてるだろ?タヌキ?出てくんなっ!おいコラッ!ちゃんと曲がれ!くそっ!お前退けよっ!はあ?いきなり雨降るなよ!うわっ!滑るっ!」


ぶつかりまくり、転倒しまくり。


終わってみると、


「わははは♪何人なりとも俺の前を走らせねぇ!」


拓也君の圧勝で。


「……くそぅ…」


悔しがる佐野君。


「もう一回っ」


佐野君が叫んで。


「無理無理、俺には勝てないって、あはは♪」

「次は勝つ!」

「仕方ないなぁ、後一回だけだぞ?」


再びバイクは走り出した。


そうやって佐野君と拓也君は五回もゲームを繰り返し…


「佐野!誰しも向き不向きがあるって事、もっと速くなったらまた遊んでやるよ?わははは」

「……………くっ…」


結局佐野君が勝つ事は一度も無かった。


…佐野君、元気出して。





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