秘密



佐野君はクレーンゲームを正面から、右、左、と移動しながら中を覗き込んで。


「よし…あれにロックオン…」


硬貨を入れてゆっくりとクレーンを動かす。

先ずは横に、次に縦に。


「!っ、そこだっ」


手を離すとクレーンは下に下がりアームを広げて。


「よしっ、行けっ」


ベアを掴んでゆっくりと戻ってきて。


「まだ落ちるなよ〜…」


アームが景品出口の上で開いて、ベアは下に落とされた。


「よっしゃ」


佐野君はベアを取り出し、


「はい、取れた」


私にベアを差し出した。


「ありがとう、佐野君」


ベアをギュッと抱きしめる。


「はは、この位、まだ後二回残ってる、どれがいい?」

「ベアがいい、美樹ちゃんにも同じ物あげたい」

「了解」


再び佐野君上手くはクレーンを動かして二個目のベアをゲット。

最後の一回は途中で落ちて失敗。

でも、続けて二個なんて凄い。


「わあ、二個だ、嬉し、佐野君、クレーンゲーム上手いね?」

「ん?コレは簡単だから」

「私がやっても取れないよ、どこにクレーン合わせれば取れるかなんて、わからないもん…美樹ちゃん達、何処かな?探しに行こ?」


二人を探して辺りを見ながら歩いていると、卓球をしている拓也君と美樹ちゃんを発見。


近付いて声をかけようとしたけど、二人供真剣で声をかける事が出来なかった。


凄いラリーの応酬……
二人とも上手……


拓也君のスマッシュが見事に決まった。


「っさあぁぁぁっっ!!俺の勝ちっ!」


どうやら拓也君の勝ちで終わったみたい。


拓也君はラケットをピシッと美樹ちゃんに向けて、


「約束通りっ、今日は一緒に風呂に入るぞっ!」

「!っ…ばっ…何大きな声出してんのよっ!はっ、恥ずかしいでしょっ!」


……そう言う美樹ちゃんの声の方が大きいよ…

しかも、お風呂って……
…私まで恥ずかしくなる…


「いいなぁ、拓ちゃん…ね?奏、俺達も卓球やらない?」

「やっ…やりませんっ!」


……私…絶対に負けるから。




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