秘密


「何か、小腹空いたな…」

「あ、私クレープ食べたいな」

「……クレープ…」

「佐野君クレープ嫌い?」

「…いや、大丈夫だ…」

「甘くないクレープもあるよ?」

「え?」

「行こう」


佐野君を引っ張って、美樹ちゃん達も誘ってゲームコーナーを出ると、ムッとする熱気に包まれた。


「…あちぃな〜」

「もう直ぐ夏だからね」


佐野君と手を繋ぎクレープ屋さんへ。


後ろから拓也君が、


「仲いいね〜♪」


あ。

普通に手繋いじゃった…
拓也君が居るのに。


「拓ちゃんは大丈夫だよ」


佐野君が耳元で呟く。

そっか、美樹ちゃんの彼氏だもんね?
知ってて当たり前か…

拓也君って何にも言わないけれど…
私達の事…理解してくれてる。
美樹ちゃんもだけど、拓也君も凄くいい人…


私は振り返って。


「うん。仲いいよ」


笑顔で答えた。


「はは、そんじゃ今日は一緒に風呂に入ろ?」


佐野君がそう言ってきたので私は一気に顔が熱くなってしまった。


「そっ…それは無理ですっ」

「……何だ…残念…」


そんなの無理に決まってる、だって佐野君のお家に行くんだよ?

お父さんやお母さんも居るのに…


「さっ、佐野君?甘い物苦手でしょ?ツナとかハムチーズとかもあるよ?」

「へぇ、そんなのあるんだ?てか何で甘い物苦手って知ってるの?」

「前に佐野君ちに行った時に、佐野君の好物とかお母さんに聞いたの」

「…そうだったんだ」

「うん。甘い物が苦手で好きな食べ物は他に、唐揚げとかオムライスとか」

「うん。好き、奏の弁当に唐揚げ入ってたらテンション上がる」

「あはは、じゃ次は唐揚げ入れるね?」

「やり、ありがと、奏」


クレープ屋さんに着くとそれぞれ注文して。

佐野君はハムチーズ。
私はストロベリーヨーグルト。
美樹ちゃん達はチョコバナナ。


歩きながら食べる。


佐野君と手を繋いで。


今はそれだけで幸せ。


…他の事なんか考えたくない。





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