秘密


「粗方乗り尽くしたな」

「うん」

「ラストはいよいよアレだ」

「そうだね」

……佐野君が指差す先は。

「スワンだ!」


白鳥の足漕ぎボート……


「…はい?」

「ははは、冗談冗談」


な、何だ…冗談か…ははは。


「行こう、観覧車」

「うん」


遊園地最後の締めは、やっぱり観覧車。

随分陽も傾き始めたし、パレードが始まる前に是非乗っておきたい。


一周する頃には丁度パレードが始まる時刻になる筈。


佐野君の家にお土産と恭介さんのお土産も買った。

佐野君のお父さんのプレゼントは、明日佐野君と以前に行ったショッピングモールに買いに行くつもり。


うちのお父さんには…
もう…知らない。


「奏?疲れたか?」


佐野君が心配気に私の顔を覗き込んできた。


「ううん。大丈夫、早く行こう」


佐野君の手を取って足早に観覧車へと向かう。


タイミングがよかったのか、わりと早くに乗る事が出来た。


拓也君と美樹ちゃんはさっき、お土産物コーナーで別れて、そこからは別行動になった。


四人で遊べて凄く楽しかった。
また一緒に遊びたいな。


「奏、こっちおいで」

向かい合わせて座る佐野君がそう言ったきて、

「え?…でもバランスが…」

「大丈夫だって」

「…でも…わっ…」


佐野君から腕を引っ張られ、私は佐野君の腕にすっぽりと包まれる。


「よいしょ」


佐野君はさらに私を膝の上に乗せてしまった。


「さ…佐野君、恥ずかしいよ…」

「二人だけだよ?」

「でも、外からまる見え…」

「どこも変わんないよ、ほら少し下見て?」


言われて下を見ると観覧車の中でカップルがキスをしていて。


「ほらね?誰も見てない」

「でも…私達は見ちゃったじゃない…」

「見ないようにすればいいんだよ…」


佐野君の顔が夕日に照らされてとても綺麗で…

私は佐野君しか見えなくなってしまった。


佐野君の顔がゆっくりと近付いてきて、私は目を閉じる。


目を閉じていても私の瞳の奥は佐野君しか写らない。



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