秘密









「どうする?やっぱり家に帰った方がよくない?」


遊園地を出て駐車場で奏に聞いてみた。

父親の事は今日は何も言わなかったけど、喧嘩して昨日の今日で外泊するのは、父親を余計に心配させるんじゃないか?


奏一人娘だし…


俺だったらこんなに可愛い娘がいたら、もう無茶苦茶心配して、外にも出したくない。


もし俺と奏の娘だったら……


…うわあ……

考えただけでも心配になってくる。

ましてや男と一緒に居るなんて……

そんな事はお父さんは絶対に許さん!俺と奏の娘に手を出そうなんて…

ぶっ殺す……


と、一人で脳内ホームドラマを演じていると、


「大丈夫、お父さんにはちゃんとメールしたから…」

「仲直りした?」

「………うん」


嘘だ。

…奏、わかりやすい…

そんなに激しい喧嘩したのか?…


「…じゃあ、明日は早めに帰ろうな?今日はもう遅いし…」


言いながら奏にメットを被せる。


「何か食ってから帰るか?」

「うん。お腹空いた」


メット越しに笑顔を見せる奏。


「拓ちゃん達はホテルでディナーかな?」

「かもね?」

「俺達もファミレスで高級ディナーでも食うか?」

「あはは、そうだね?フルコースで」

「前菜は豆腐サラダ、スープはスープバーで、メインディッシュはサイコロステーキ?ははは」

「立派なフルコースだよ」

「考えてたら、かなり腹減ってきた、早く行こう」

「うん」


バイクに乗るとパーク内の照明が落とされて、今まで明るく浮かび上がっていた沢山の乗り物達が、ピタリと活動を停止してしまったような感じがして、少し物悲しくなる。


キーを回しエンジンをかけて、アクセルを回し駐車場を後にする。


絶叫マシンは辛かったけど、かなり楽しかった。


拓也の話には正直驚いたけど、あんな女みたいな可愛い顔してるクセに、中々男らしい一面もあったりして。


俺も努力しないとな。


今のままの関係を続ける訳にはいかない。


ハッキリさせないと。


奏の為にも、自分の為にも。



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