秘密
「奏ちゃ〜ん♪待ってたよ〜♪」
玄関先で両手を上げて、大袈裟に出迎える兄貴。
「静さん、今晩は、またお世話になりに来ました」
「遊園地行って来たんだって?疲れただろ?さ、上がって?直ぐに風呂に入る?」
奏の荷物を受け取り、スリッパを床に置く兄貴。
…お前は奏の新妻か?
リビングに入ると父さんはビール片手にスポーツニュース。
母さんはその隣で趣味でもあるビーズアクセサリーを作っていて。
「お帰り茜、奏さんもいらっしゃい」
「うん。ただいま」
「お邪魔します、お世話になります」
「奏ちゃんいらっしゃい、丁度よかった今出来た所なの」
母さんは奏に手招きし、奏は母さんの横の床にペタリと座る。
「何ですか?」
「はいコレ、奏ちゃんにあげる」
言いながら母さんはソファの肘掛けに置かれた奏の腕に、出来上がったそれを着ける。
「わあ、可愛い…お母さんが作ったんですか?」
「ふふふ。そうよ、ネットで売ったりもしてるのよ?」
「凄い…でも、こんなに可愛いんだもん、お金払ってでも欲しいかも…お母さん、ありがとうございます、あ。お土産があるんです」
ソファに腰掛けテーブルにお土産を広げる。
定番のクッキーやらベアの携帯ストラップやら何故かベアの耳つきカチューシャまで…
そしてそれを頭に着けてはしゃぐ父。
何気に似合ってるのが微妙だったり…
それを見て喜ぶ奏。
「奏ちゃん、疲れたでしょ?お風呂入っちゃいなさい?今夜も茜の部屋で休んでね」
そう言われて俺達は一旦二階の部屋に荷物を置きにいく。
「佐野君のお母さん凄いね、こんなに可愛い物作っちゃうなんて」
俺に腕を向けてそれを見せる奏。
見るとそれはピンクと白の石で作られたブレスレット。
奏の白く細い腕によく似合ってる。
「まあね、趣味で小遣い稼ぎも出来て、一石二鳥だな」
奏が部屋を出て、久しぶりの自分の部屋で奏に触発されて、テトリスでもやるかとゲームをゴソゴソと引っ張り出していると。
「茜?お父さんが話があるって」
母さんがドア越しにそう言ってきた。