秘密



「奏ちゃ〜ん♪待ってたよ〜♪」


玄関先で両手を上げて、大袈裟に出迎える兄貴。


「静さん、今晩は、またお世話になりに来ました」


「遊園地行って来たんだって?疲れただろ?さ、上がって?直ぐに風呂に入る?」


奏の荷物を受け取り、スリッパを床に置く兄貴。

…お前は奏の新妻か?


リビングに入ると父さんはビール片手にスポーツニュース。


母さんはその隣で趣味でもあるビーズアクセサリーを作っていて。

「お帰り茜、奏さんもいらっしゃい」

「うん。ただいま」

「お邪魔します、お世話になります」

「奏ちゃんいらっしゃい、丁度よかった今出来た所なの」


母さんは奏に手招きし、奏は母さんの横の床にペタリと座る。


「何ですか?」

「はいコレ、奏ちゃんにあげる」


言いながら母さんはソファの肘掛けに置かれた奏の腕に、出来上がったそれを着ける。


「わあ、可愛い…お母さんが作ったんですか?」

「ふふふ。そうよ、ネットで売ったりもしてるのよ?」

「凄い…でも、こんなに可愛いんだもん、お金払ってでも欲しいかも…お母さん、ありがとうございます、あ。お土産があるんです」


ソファに腰掛けテーブルにお土産を広げる。


定番のクッキーやらベアの携帯ストラップやら何故かベアの耳つきカチューシャまで…


そしてそれを頭に着けてはしゃぐ父。


何気に似合ってるのが微妙だったり…


それを見て喜ぶ奏。


「奏ちゃん、疲れたでしょ?お風呂入っちゃいなさい?今夜も茜の部屋で休んでね」


そう言われて俺達は一旦二階の部屋に荷物を置きにいく。


「佐野君のお母さん凄いね、こんなに可愛い物作っちゃうなんて」


俺に腕を向けてそれを見せる奏。

見るとそれはピンクと白の石で作られたブレスレット。

奏の白く細い腕によく似合ってる。


「まあね、趣味で小遣い稼ぎも出来て、一石二鳥だな」


奏が部屋を出て、久しぶりの自分の部屋で奏に触発されて、テトリスでもやるかとゲームをゴソゴソと引っ張り出していると。


「茜?お父さんが話があるって」


母さんがドア越しにそう言ってきた。





< 306 / 647 >

この作品をシェア

pagetop