秘密
「はは…そう言うと思ったよ…でも何でだ?」
「それは……」
奏と居たいから。
離れたくないから。
「…こんな爆弾付きの膝抱えて、アメリカになんて…正直自信がないんだ…」
それもホントの事だった。
情けないけど、アメリカに一人で行って打ちのめされて帰ってきてしまうんじゃないかと。
二度もあの屈辱を味わった俺は、本気でやってそれが報われなかった時の悔しさをよく知ってる。
もし次に同じような事になったら?
なんて考えてしまうと、自分でも情けないけど、その後立ち直る自信なんて無いような気がして…
「……そうか…」
父さんは残りのビールを飲み干し。
「でも、茜がもしそれでも行くと決めたら、父さんは喜んで送り出してやるよ…お前はまだ若い、諦めなければどんな事だって出来るんだって事、忘れるなよ?」
「…うん。わかってる、ありがと、父さん…」
「はは…話は変わるけど、お前もデカくなったな?」
「うん。今190…」
「身長の事言ってるんじゃない、奏さんの事だよ、あんなに綺麗で礼儀正しい娘、そうそう居ないぞ?大事にしろよ?」
そんな事言われなくてもわかってる。
「…うん。もういい?部屋戻るよ?」
「ああ…父さんも、もう寝る、飲み過ぎた」
「ちゃんとベッドで寝ろよ?お休み」
「お休み…」
立ち上がりリビングを出ると丁度奏もそこに居て。
…今の話…もしかして聞かれた?
「あ。佐野君、お風呂先にごめんね?」
別に変わりないな…
よかった、聞かれてない。
奏を不安にさせたくない。
「うん。俺も風呂入ろ」
奏を促し二階に上がる。
階段を上がりながら、
「風呂上がったらテトリスやろう」
「うん。いいけど…私負けないよ?」
「やってみないとわかんないだろ?」
「え〜?ホントかなぁ?」
「あっ、今心の中で絶対に無理って思っただろ?」
「え?…そんな事…ないよ?」
「いや、絶対思った」
「…ちょとだけ」
「もし俺が勝てたら今度一緒に風呂な?」
「え〜?」
「よし。決まり」
「まっ、負けないもんっ」
……奏。
ずっと一緒に居ような。