秘密
−コンコン…
軽くノックの音がして、その小さな音にさえ心臓が跳ね上がる程、大袈裟に肩がビクッと痙攣してしまった。
「奏ちゃん?入るよ?」
静さん?
慌てて顔を両手で覆う。
…涙……出てない?…よし。
「…どうぞ」
静さんはドアから顔を覗かせると。
「アイス、食べない?」
と、コンビニの袋を下げて部屋に入ってきた。
「食べたいです、わざわざ買ってきてくれたんですか?」
「ついでだよ、あ、髪、乾かしてないじゃん、ダメだよ?きちんと乾かさないと、えーと…ドライヤー何処だっけ?…お、あったあった…」
言いながら静さんはドライヤーを出してきて。
「乾かしてあげる、奏ちゃんはアイス食べてて?」
「え?…いいです、自分でやります」
「アイス溶けちゃうだろ?ほらこっち来て」
静さんはベッドに腰掛け私に手招き。
私は言われるがままその前にペタリと座る。
「すみません、ありがとうございます、静さん」
「敬語は無しって言ったでしょ?それに俺の事は…」
「お兄ちゃん?」
「よし。アイス食べてなよ」
「うん。いただきます」
静さんはドライヤーのスイッチを入れると、髪を乾かし出して、私は袋からストロベリーのカップのアイスを出して蓋を開け、ひとくち口食べると、冷たい甘酸っぱい香りが口の中に広がる。
「奏ちゃんの髪って、ホント綺麗だね?カラーリングもパーマもした事ないでしょ?」
「うん。ないで…ないよ?わかるの?」
「わかるさ、これでもプロなんだから、でもさ?これから夏になるから、も少し明るめにしてもよくない?」
「…しようかなって、思ったんだけど…佐野君が…この色、好きって、言ってたから…」
「だからやめたの?はは…」
静さんは指先を使って軽く頭を揉むような感じで髪を乾かしていく。
アイスを半分位まで食べた頃。
「奏ちゃん…茜と…離れたくないよね…」
「………………」
静さんが何を言いたいのかわかった。
「………はい…嫌…です…」