秘密
「…ありがとう、佐野君」
…どうしよう…凄く、嬉しい…
「前兄貴と来た時に、目付けてたんだ…まだ売れてなくてよかった」
「あの、ちょっといい?これね?このクロスの中に彼女のブレスのクロスがカチッとはまるようになってるんだ」
店員さんが太い方のブレスレットを私に差し出し、言われた通りにしてみると、太い方のブレスレットのクロスの中に、小さくクロスの穴が空いていて、私が付けてるブレスレットの小さなクロスがぴったりと収まった。
…わあ…こうなってるんだ。
…可愛い…
その形が、さっき佐野君に後ろからすっぽりと抱きしめられた事を思い出させて、顔が熱くなってしまった。
「付けてあげなよ?彼氏に」
やたらと馴れ馴れしいピアスの店員さんがニコニコと笑いながら言ってきて、私の頬はさらに熱を持つ。
「…佐野君…腕…出して?」
出された佐野君の右腕にそれを付けると、佐野君は私の左手を握り少し持ち上げて。
「はは…うん。いい感じ」
「あ〜っ、羨ましいなぁ…俺もそんなんやりてぇ〜!」
店員さんが大袈裟に声を出しすものだから、他のお客さんまでもが私達に目を向ける。
…また注目を浴びてしまった。
商品券と少し足りない分は佐野君が払ってくれて会計を済ませる。
「佐野君?私半分払うよ?」
「いいよ、この位…いつも弁当作ってもらってるし」
「……じゃ…貰っておきます」
「うん。行こうか?母さん待ちくたびれてるかも?」
「あっ!ホントだ…忘れてた…」
「奏は頭はいいクセに意外と忘れっぽいよな?ははは」
「……う」
何も言えない…
その通りだから…
佐野君が私の手を握ると、お互いのブレスレットが触れ合って。
握った掌は温かく、触れ合うブレスレットは少しひんやりとしていて、歩く度にそれが擦れ合い、意識がそこににばかり集中してしまう。
繋いだ掌以上にそれが繋がっているような気がして、恥ずかしいような、嬉しいような。
そんな複雑な気持ちになるのさえ幸せを感じてしまう。
佐野君は私を幸せにさせる天才。