秘密
厨房から中に入ると、慌ただしく動く三人のパティシエ。
キャプテンも何をやっているのかはよくわからないけど、デカいステンレスのボールをこれまたデカい泡立て器でリズミカルにかき回していた。
忙しそうなので話し掛ける事はせずに、お疲れ様。と一言だけ告げてカケルの後に続いた。
店内も人だらけで持ち帰りの客の相手を冷ケース越しに、美樹ともう一人の知らない女の子がやっていて、笑顔で対応していた。
「……美樹、可愛い…」
横でボソリと呟いた拓也の一言を聞き逃さなかった俺。
恐らくそれ以上に可愛いに違いない奏の姿を探すけど見当たらない。
「佐野君、いらっしゃい」
後ろから声をかけられ振り向くと、丸いステンレスのトレイを両手で胸に抱えた。
「……奏」
「じゃなかった…いらっしゃいませ、だね?」
笑顔で俺を見上げるメイドに思わず手が伸びそうになって。
「おっと、お客様…当店はそう言ったお店ではございません」
カケルに腕を掴まれた。
奏があまりにも可愛い過ぎて、理性がぶち壊されそうになって、抱きしめてしまう所だった…
…恐るべしメイドの破壊力…
しかもポニテなんかしてるもんだから、その破壊力はさらに倍。
「こちらへどうぞ」
奏は俺達をテーブルへと案内するために前を歩く。
その後ろ姿のポニテが右左と揺れて、黒いミニスカートの下から覗く、白く細い足がさらに強調されて、破壊力は三倍に。
こんな格好で働かせて大丈夫なのかと心配になってくる…
せめて足が隠れる販売を奏にやらせてくれと切に願う。
そう言えば今日は七夕じゃん。
…短冊に願いをかけようか?
奏に促されテーブルに着くと、メニューを開いて開いて見せてくれて。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言ってニッコリと微笑んで、早々にその場から立ち去ってしまった
……何?…その笑顔?
もう、色んな感情が溢れてしまって自我が崩壊してしまいそうになる。
「奏ちゃん…完璧だろ?彼女、割りと人見知りするみたいだからさ?あそこまでスマイル調教するの結構大変だっんだぞ?あはは」
…カケルめ…
余計な事を…