秘密



「…洋ちゃんにさ?茜の事話したんだ、スゲーバスケ上手いやつが居るって。

佐野茜って名前聞いたら洋ちゃん驚いてさ?何年も前の古いバスケ雑誌引っ張り出して来て…俺もそれ見て驚いたよ、最多得点王って…

でも、茜のバスケ、見た後だったから、なるほどって思った。

あんなに凄いプレーが出来るやつなんて早々居ないから。

『靭帯断絶からの復帰、佐野茜』

記事にはそう書かれてたけど、洋ちゃんが俺に教えてくれたんだ…

その決勝戦で…また、靭帯断絶したって…

その後にさ?洋ちゃんこうもいってたんだぜ?

『でも、あいつは必ず戻って来る、俺と同じだから』

…って。

だから俺の学校に居る佐野茜は別人だって言い張るんだよ、だから今日お前を連れてきて、それを証明したって訳…」


ひとしきり話し終えると貴司は立ち上がり、俺を見てニッと笑うと。


「…やっぱりお前は佐野茜だった」


そう言ってコートの中を走り回るヨースケの応援をしだした。


ヨースケは身体中使って汗だくになりながら車椅子を走らせボールを追い、大声を出しながらゲームを真剣にやっていて。


車椅子バスケの存在は知っていたけど、漫画や映像でしか知らなかった俺は、こんなにもバードなんだと衝撃を受けた。

足がわりの車椅子を自在に操り、右左と小刻みに、ゴールの位置だって普通のバスケと同じ。

見ていてわかった事は、フリースローで1得点、フィールドゴールは2得点あるいは3得点。
ファウルやバイオレンションのルールもほぼ同等。
唯一異なる点は、ダブルドリブルに相当するルールがないと言う事。

一回のドリブルに付き、2回以内のタイヤ操作が許されてるみたいで、3回以上タイヤを漕ぐと、トラベリングになるみたいだ。

相手選手にスクリーンをかけて、味方選手がフリーになる状態を作り出し、通常のバスケに比べ2次元方向の動きが重要みたいで、ディフェンダーをスクリーンにかけると数的有利が生まれ、とても有効なんだと伺える。恐らく車椅子バスケにおいて基本となるプレイなんだろうな。


にしても……


上半身だけで踏ん張りが利かないのに筈なのに、次々にゴールを決めるヨースケは、あの小5の決勝戦の時と全然変わってない…



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