秘密



バイクで走り初めて約一時間後。


私達は国道沿いのファミレスで昼食をとることにした。


店内に入ると、ウェイターの男性が「お二人様ですか?」とにこやかに接客してきて。


「はい。二人です」


佐野君がそれに答えた。


……二人です…

何だかくすぐったい響き。

私達はウェイターに案内され、道路側の窓際の席に向かい合わせて座る。


佐野君はメニューを開くと、


「腹へったあ〜…なに食おうかな?奏は?何にする?」


佐野君はメニューをめくりながらそう聞いてきて。


「えっとね…佐野君は?」

「俺、チーズハンバーグセットと…豆腐サラダと…あと…ナポリタン」

「えっ?そんなに食べるの?」

「は?そうか?普通だと思うけど?全盛期の頃はこれの倍は食ってたぜ?」


これの倍…


「…全盛期って?」

「…中学ん時」

「中学生の時そんなに食べてたの?」

「うん。部活やってたし…急に身長も伸びて、食っても食っても足りない位だったな。はは」

「部活?何やってたの?」

「…バスケ」

「バスケット?そう言えば佐野君身長高いもんね、何センチあるの」

「188」

「そんなにあるの?」

「でも、バスケじゃあまり高い方じゃないよ、中学でも、全国レベルになると、2メートル近くある奴も居るよ…」


そう言って佐野君は少し顔を伏せた。


…何だろ?何か怒らせたかな?


「…何にするか決まった?」


次に顔を上げた時には、いつもの優しい笑顔になってた。


気のせいかな?


「…あっ…えっとね、私も豆腐サラダ」


私もメニューを閉じてテーブルの隅の呼び鈴を押した。


「は?それだけ?」


佐野君は呆れたような顔で私を見た。


「…だって、このサラダ結構な量だよ、そんなに食べれないよ」

「奏はもうちょっと太った方がいい、腕とか細すぎ」


佐野君はそう言うとテーブルの上に置いていた私の手首を掴んだ。


「何これ?細っ!」

「そんな事ないもん…」


…気にしてるのに…私だって、もうちょっとふっくらになりたい。


佐野君の彼女みたいに…


…そしたら佐野君は…


やだ。
私ったら何考えてるんだろう?


……そんな事…



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