秘密
−タンタンタン…と…
俺の掌で弾かれながら、体育館の床を鳴らすボール。
球技大会以来のボールの感触。
さっきの試合を見て、身体が疼き出してしまっていたのは間違いなく事実で、俺はボールを弾きながらコートの中へ。
始めはゆっくりとドリブルで軽くコートを小さく一周した。
チラリとヨースケを見てみると、真剣な表情で俺を見ていて、始めは躊躇いもあったけど、あんな顔で見つめられたら、そんな考えも吹き飛んでしまった。
試合終了したはかりでざわついていたこの体育館も、いつの間にか静まり返っていて。
何も知らない他の選手達は、何だあいつは?みたいな顔で俺に視線を送る。
徐々にスピードを上げて行き、まずはスリーを放つ。
放物線を描きながらボールはそのままリングの中へ。
落ちて跳ねるボールを拾いシャンプシュート。
再びボールを拾うと次にレイアップ、続けてフェイドアウェイ。
だんだん動きが乗ってきて、身体が熱くなってきた。
反対側のゴールに向かって走り出す。
ドクドクと心拍数が上がってくる。
もう向こう側のゴールしか見えなかった。
大きく助走をつけて、身体中のバネを使って高く跳ぶ。
腕を伸ばし、ボールをそのままリングに叩き込む。
ザシュッ、とボールはネットを揺らして下に落ち。
リングにぶら下がったまま上からそれを見下ろすと。
「……凄い…」
「誰?…あいつ…」
「…ダンク…シュート…」
ざわめき出すコートの外側。
リングを離し着地して、いまだに跳ねるボールを片手で掴むと。
−パンパンパン…
と、ヨースケが手を叩き、それを合図に一斉に拍手が鳴り響く。
「君、凄いな?」
「もしかしてプロの人ですか?」
「何処のチーム?」
「大学生?」
「もう一回、ダンクして見せてくれっ!」
次々に車椅子が近付いて来て、質問攻めにあってしまった。
…ちょっと、やり過ぎたか…
「はいはい。そいつは俺の後輩、普通の高校生だよ」
ヨースケが寄ってきて、返答に困る俺を見て、笑いながら皆にそう説明してくれた。