秘密
昼飯を食い終わると貴司は合コンのお誘いメールが届いたらしく、俺たちをほっぽり出し嬉々としてファミレスから去って行ってしまった。
明日から夏休み。
あいつの頭の中は合コンの事でいっぱいらしい…
「貴司のやつ、相変わらずだなぁ…」
「前からああなの?」
「うん…女の子大好き…」
呆れたように笑うヨースケ。
それからふと、表情が変わって。
「……佐野…バスケは、もうやらないのか?」
「……………」
ヨースケの口から出るその言葉は、ズシンと俺に重くのし掛かる。
ヨースケは氷が溶けた アイスコーヒーを飲み干しテーブルに置くと。
「お前の事だから、絶対にインハイ出て来ると思ってた…実は俺さ?お前の三年の時の決勝戦…会場で見てたんだよ…」
「え?…」
「やっと義足にも慣れてきて、初めて自分一人で遠出した、お前の事…ずっと気になってた…その前の年の決勝戦はケーブルテレビで見たよ…そんなにお前がどんな復活を果たすのかスゲー興味あった…
そんな俺の心中なんか知っちゃいないだろうけど、お前は見事に復活していた事に、俺は胸が熱くなったよ…
お前はやっぱり俺と同じだって…
バスケが好きでたまらないんだって…」
「……………」
「後半戦終了…七分前……
お前は今でも忘れる事は出来ないだろうけど…
俺もあの光景はいまだにハッキリと覚えてる。
運が悪かったとしか言い様のない事故だったけど、あの時のお前はそれでも諦めずに、這いつくばってボールを追おうとしていた…
俺だって絶対にそうしてたと思う。
控え室に運ばれていくお前の後を追って、俺もそこに行ったんだ…
通路を歩いていると試合終了のブザーが鳴って…
恐らく……お前達が…準優勝だろうなって…
控え室の前に来るとドアが少し開いていて、お前が顧問の先生から丁度負けたんだと聞かされてる時で…
お前は悔しそうな声で……
そこには居ないチームメイトに何度も謝ってたよ…」