秘密
◇第13話◇
◇◇◇




「あ…今度うちの実家近くで、花火大会あるんだけど、行きたい?」


夏休みに入って数日、今日は朝から佐野君のアパートで一緒に課題をしていたら、思い出したように佐野君がそう言ってきて。


「花火大会?」

「うん。今度の土曜日、行く?」

「行きたいですっ」

「ははは、決まりな?泊まる?」

「うんっ!」


私は元気よく返事した。


「拓ちゃん達も誘おうか?そんでついでに海に行こう」

「拓也君と美樹ちゃんも?」

「二人ともうちに泊まらせる」


拓也君と美樹ちゃんと一緒に佐野のお家に?
それって…凄く楽しそう。


「あ…でも、美樹ちゃんと二人一緒にアルバイト休めるかな?」

「バイトの人数増えたんだろ?誰かにシフト変わってもらったら?土日位は休ませてくれるさ、なんなら俺がカケルさんに頼んでやろうか?」

「ううん、今日カケルさんに言ってみる、多分大丈夫」


チリン、と音がして少し開いた窓からシロが帰ってきた。


「あ、シロお帰り」


私は立ち上がるとキッチンからシロの足吹きタオルを持ってきて、綺麗に拭いてあげると、鈴を鳴らして佐野君の膝に飛び乗った。


「シロ、お前最近どこ行ってるんだ?」

「佐野君知らないの?」

「え?奏は知ってんの?」

「うん。この近所のお家に出入りしてるの何度か見たよ、そこにもね?猫ちゃんが居るんだよ、その子とお友達みたい」

「……メスか?」

「それはわかんないけど、今度お家の人が居たら聞いてみる、いつもシロがお世話になってるみたいだし、挨拶しとかないと…」

ふと時計に目をやると、12時を越えていた。

もうお昼か……
確か冷凍のご飯があった筈。


「佐野君、お昼炒飯でいい?」

「うん」

「じゃ、作るね?」


言いながらキッチンへ向かうと、テーブルに置いてある佐野君の携帯が振動して。


「あ。洋ちゃんだ…」


言いながら佐野君は電話に出た。


「…洋ちゃん、どうしたの?…」


洋ちゃん。

佐野君から話しは聞いてる、宮地君の従兄で。


車椅子でバスケをやってるって……






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