秘密
「はぁ〜…食ったぁ、腹一杯…ゲフ…」
そう言ってその場にゴロリと横になる佐野君。
「佐野君…お行儀悪いよ…」
「はは…勘弁して」
私はそんな佐野君をたしなめつつ、食器を片付ける為に立ち上がる。
「あ、俺が洗うから、流しんとこ置いといて」
「うん、ありがと」
食器をキッチンに運んでシロのお水を取り替えて、おトイレを綺麗にしてあげると、そろそろアルバイトに行く時間。
「佐野君、私、アルバイト行ってくるね」
エプロンを外しながら寝そべる佐野君に声をかけると、佐野君は身体を起こし。
「送ってく」
「え?…いいよ、夕方までゆっくりしてなよ…」
「書店に行くし、ついでだから」
「書店?…何買うの?」
「漫画と参考書」
「何の参考書?…私の貸してあげようか?」
「いや、いいよ自分で買う…英語、一学期かなりヤバかったから…ちょっと集中的にやろうかと…」
「佐野君…理数は強いのにね…」
佐野君は立ち上がり、クローゼットからGジャンを出してそれを着ると、私はバッグに課題を詰め込む。
「佐野君、リョータ君達の試合、19日から行くの?」
「いや、さすがに三日も続けては無理だろ?最終日、21日だけ行くよ」
「え?…でも…」
…もしその前に負けてしまったら?
なんて言えなくて、佐野君の顔を伺っていると、佐野君はそれを察したのか私に。
「あいつ等なら必ず決勝トーナメント勝ち進んで、最終日まで残ってるよ、だから、そんな心配すんな」
何処からそんな自信が出て来るのかはわからないけど、そう言って笑う佐野君の言葉は、自分の事のように自信満々で、ホントにそうなると確信して疑ってもいない様子。
佐野君がそう言うんだから、リョータ君達は絶対に途中で負けたりしなんかない。
私もそんな風に思えてきて。
「そうだね、負けたりなんかしない、だって、あんなに努力して頑張ってるんだもん」
「うん、だから、最終日、あいつ等が優勝する姿、二人で見に行こう」
「うん」
そう佐野君と約束をして、駅前ビルへとバイクで送ってもらった。