秘密
バス停で美樹ちゃんと別れて、一足先にバスに乗り込み、窓から流れる風景をぼんやりと眺めながら、20分程バスに揺られていくと、佐野君のアパート近くの停留所。
下車のブザーを押してそこで降りて、佐野君のアパートへと向かう。
ほぼ毎日の日課でもある。
コンビニの角から曲がりアパートの階段を上がって、鍵を開け中に入り電気を点けると、いつもと違う異変に気付く。
あれ?
シロが居ない?
いつもドアを開けたら直ぐにシロが玄関で待ってるのに、今日はどうしたのかそこには居ない。
「……シロ?」
声をかけるけど、鈴の音すら鳴らなくて。
部屋に入ると窓が少し開いていて、そこから外に出たみたい。
……佐野君。
戸締まり忘れてる…
私はバッグをその場に置いて、再びドアを開けて外に出た。
…シロ。
どこ行っちゃったの?
アパートの回りをキョロキョロと、シロの名前を呼びながら探してみるけど、気配すらなく。
事故になんか…
遇ったりしてないよね…
私は心配になってしまって、アパートの敷地から出てシロを探して歩いていると、ふとシロがいつも遊びに行っている一軒家を思い出す。
…もしかしたら、そこに居るかも。
私は踵を反して公園近くのその家へと急いだ。
和風な平屋の一軒家で、小ぢんまりとした庭には、色とりどりの花が植えてあって、小さな家庭菜園にはトマトやキュウリや茄子や香草等が植えてあり、とてもよく手入れされいるお庭だった。
携帯を見て時刻を確認すると、午後10時30分。
表札を見てみると【岩澤】と書かれていた。
夜遅くに失礼かも知れないけど、シロの事が心配な私は入口の門を開け中に入り、玄関の引き戸の横にある呼び鈴を押した。
程なくして。
「…はい、どちら様?」
若い男性の声がして。
「突然…夜分遅くに申し訳ありません。私、奥村と言います」
「はい、で?何の用件でしょうか?」
男性の若干冷たい口調に怯みつつ、私は事の経緯をインターホン越しに説明した。