秘密
「ホントにお世話になりました、それじゃ、失礼します」
再び頭を下げて玄関を出ようとすると。
「…あっ…送って行くよ」
男の人がそう言って靴に足を入れると、おばあさんが。
「そうね、そうしてあげて?こんなに遅い時間に女の子の一人歩きは危ないから…」
「え?…近所ですから、大丈夫ですよ」
「…いや、近所でも危ないよ…君みたいな…可愛い子…じゃ、ばあちゃん、ちょっと行ってくる」
「あ。ついでに牛乳買ってきて?明日の朝の分がもう無いのよ」
「うん。わかった、行こうか?」
「あ、はい…おばあさん、また明日伺います、おやすみなさい」
「きっとよ?待ってるから」
「はい」
おばあさんにそう言って私は、おばあさんの孫らしき男の人に送ってもらう事に。
ホントに近所だから、大丈夫なんだけど、折角のご行為に甘える事にした。
「家、どの辺?」
「あ。コンビニの裏です」
佐野君のうちだけど…
「はは、牛乳買うのに丁度よかった」
シロを抱えて男の人の少し後ろを歩いていると。
「……君、高校生?」
男の人がそう聞いてきて。
「はい。高二です」
「………いっこ下か…」
「え?…高校生なんですか?」
「うん。俺、高三」
「大人っぽいから、大学生位かと思ってました…」
「はは…よく言われる…」
「あの、おばあさんのお孫さんなんですか?」
「うん、ばあちゃん、独り暮らしだから、時々バイトの帰りに飯食わしてもらってるんだ、たまに行ってやらないと、寂しがるし…それに年寄りの独り暮らしって意外と危ないから、変なセールスとか多いし…」
さっきは冷たい声なんて思ったけど、あれはそれを警戒していたから、あんな感じで対応してたんだ…
おばあちゃん思いの優しい人なんだな…
送ってもらいながら歩いていると、コンビニの明かりが見えてきて、私は男の人の前に立ち。
「送って下さってありがとうございました、もう直ぐそこですから、それじゃ」
軽く会釈して私は背を向けて走り出した。
「あっ…よかったら下の名前、教えて!」
私は走りながら振り向き。
「奏です、おやすみなさい」